第70話 本選1日目

「これより!園内戦本選を開始します!」


闘技場の真ん中に俺達16人が並ぶととうとう本選開始のアナウンスがかかった。


「本選出場者はこの16人!」


そして一人一人名前と学年を呼ばれていった。どうやら1年は俺とソフィとシャナだけみたいだ。


「早速第1試合を開始します!」


そしてそのアナウンスがかかると第1試合に参加しない人が闘技場から去っていった。


「第1試合!ガリー・ミラード対ゼロス・アドルフォ始め!」


なんと俺は第1試合だったのだ。ソフィは第7試合、シャナは第8試合である。なんで俺だけこんな早いんだ?


「うおぉぉぉ!!」


始まった瞬間に雄叫びを上げながら相手が突っ込んできた。相手は大剣を持った男だった。何度も攻撃を避け続けているが、ただ騎士団長のように素早く大剣を振ってくる訳ではないので隙だらけだった。なので大剣が地面に叩きつけられた瞬間に大剣を踏んでその男の腹に剣を振った。


「ぶごっ!」


本選も模擬刀だが刃を潰しただけのちゃんとした金属の模擬刀のため当たると普通に痛い。地面に突き刺さったままの大剣を抜いて、腹を押えて蹲っている男の首に抜いた大剣を当てた。


「ま、参った…」


「試合終了!勝者!ゼロス・アドルフォ!」


「「「わぁ〜〜〜〜!!!」」」


周りが盛り上がっている。時間にして5分もかかっていないがそれでも見ている人にとっては楽しかったようだ。


「ゼロ兄様お疲れ様です」


「おつかれ」


「2人もこの後頑張ってね」


「はい」


「ん」


闘技場の控え室に戻るとソフィとシャナから声をかけられた。俺と対戦した男は立ち上がれなかったのでタンカで治療室に運ばれて行った。


「続いて第2試合を始めます!」


そうして試合もどんどん進んで行き、ソフィの第7試合が始まった。



「第7試合!ソフィア・アドルフォ対レバンダ・スパージ始め!」


ソフィの相手の男は片手剣と小さな盾を持った男だった。ソフィがローブ姿で明らかに魔法使いのため始まった瞬間にダッシュでソフィに向かってきた。


「ファイアボール」


「うわぁ〜!」


「ウィンドボール」


「わぁ〜!」


「場外!試合終了!勝者!ソフィア・アドルフォ!」


「「「わぁ〜〜!!!」」」


ソフィは相手を魔法で場外まで飛ばして終わった。早い決着だが魔法対武器の場合ほとんどがこうなっている。他の試合でもそうだった。魔法を放つのが先か、先に武器が届くところまで来るかのスピード勝負である。


「おつかれソフィ」


「ありがとうございます」


「シャナも頑張ってね」


「ん」


「続いて今日最後の第8試合を始めます!」


そのアナウンスと同時にシャナは闘技場に向かっていった。


「第8試合!コリーナ・ギリアム対シャイナ・リンガリア始め!」


「ファイアボール!」


シャナの相手の女は始まった瞬間に魔法を放った。


「あれ?どこ!?」


ファイアボールが地面に当たって砂煙が舞うとシャナの姿はどこにもなかった。


「後ろ…」


「っ!?」


そしてキョロキョロと周りを見渡しているとシャナが後ろから首に模擬刀を当てた。


「参りました…」


「試合終了!勝者!シャイナ・リンガリア!」


「「「わぁ〜〜〜〜!!!」」」


そして相手が降参したので試合は終わった。シャナは1回でも隠れられると見つけるのは難しい。


「おつかれ」


「お疲れ様です」


「ん」


そして今日はもう解散のため俺とソフィとシャナは3人で帰った。


「シャナまた明日」


そしてシャナとは違う道になったので俺はそう挨拶したが2人は睨み合っている。


「明日は負けない…」


「私が勝たせてもらいます」


そう言ってシャナとは別れた。


「ゼロ兄様はどちらを応援しますか?」


「うーん…どっちも応援しないかな?」


「え?どっちも応援しないんですか?」


ソフィはきっと両方応援するという答えが来ると思っていたのだろう。


「今日の試合を全部見たけど俺が負けるかもしれないのがソフィとシャナの2人だけに見えたから2人とも負けてくれるのが俺的にはベストなんだよ」


力を隠している人がいたかもしれないので確実にとは言えないがソフィとシャナ以外には負けそうにない。それにソフィとシャナは俺の能力をある程度知っているのでそこも厄介だ。


「なら私もゼロ兄様が負けるように祈ってますね」


「俺は決勝までは誰にも負けないから」


「決勝では負けるのですか?」


「もちろん負けないよ」


「そうですか」


なんて事を話しながら帰っていった。そして心の中では俺はソフィとシャナのどちらが勝つのか予想を立てていた。勝負の分かれ目はソフィがどこまで本気でやるかどうかだと思う。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る