第61話 謎

「あっ!でも安心して!ジールの力は使えるから!」


「ならよかっ…いや、全く良くはないな」


ジールの力を使えるのは嬉しいが精霊王のユグの力を使えないのはとても痛い。


「誤解しているようだから言っておくがユグの力が使えない原因はゼロ、お前だ」


「俺?」


「ああ。俺は最上位精霊のベテランだからお前の力に合わせて力を弱くしてやれるがまだ精霊王になったばかりのユグにはそれができない」


「つまり今の時点だとジールは一応使えはするけど結局ジールもユグも俺にとっては宝の持ち腐れになってるというか…」


「いや!違うんだよ!」


「その通りだ」


「ちょっとジール!確かにその通りなんだけど、それは思ってても言っちゃだめなの!」


いやユグさんよ…。あなたの言葉がさらに追い討ちをかけてきてますよ?


「だから早く俺達を使いこなせるくらいになれ」


「っ!」


「そうしないとユグも成長できないしな!幸い俺は弟の次に強い精霊だ。何でも教えてやるぞ」


「あっ!ユグも教えることくらいはできるよ!」


ジールはわざと俺を悪く言ってやる気を出させようとしていたのだろう。こう言われるとどうしても期待に答えたくなってしまうものだ。俺ってもしかしてちょろいのか?


「俺が強くなり過ぎてお前達が実力不足にならないように気を付けろよ?」


「はっ!言うじゃーねーか!その時を期待しないで待っててやるよ!」


「ユグは期待してるから頑張ってね!」


よしっ!俺もまだまだ強くならなければいけないな!そしてそのためには上限の称号をどうにかしなければならない。


「じゃあそろそろ出るか」


「あっそうだね」


そしてジールが俺達を囲んでいる雷の壁を消した。


「ゼロ兄様!大丈夫ですか!!」


「だ、大丈夫…」


壁を消した瞬間にすごい勢いでソフィが俺の元にやってきた。俺が雷エンチャントしたよりも早くない?


『雷の最上位精霊様…そして精霊王…お久しぶりでございます』


「おっ!闇の最上位精霊!ん?今はシャドウか!久しぶりだな!元気してたか!」


「シャドウくん、久しぶりだね」


そしてギルド長の精霊のシャドウがジールとユグに片膝を立てて頭を下げた。こうして見ると2人ってとてもすごい精霊だと再確認できる。


「ゼロス…あなたって人は……」


「あはは…」


片やギルド長は手をおでこに当てて天を仰いでいる。


「詳しい話はまた今度聞くわ…今日はもう疲れただろうし時間も経ってしまったし帰りなさい。私も疲れてしまったわ」


「えっと…ごめんなさい」


「こちらこそなんかごめんね…」


そして少しふらつきながらギルド長が訓練所から出ていった。確かに俺もMPをほぼ使い果たしているので疲れている。


「あっ2人はどうすればいいの?」


ジールは特に常に雷を纏っているし目立つだろう。


「ん?戻るから問題ないぜ」


「戻る?」


「こんな感じだ」


そしてジールユグが俺に振れると2人は俺の中に消えて行った。


「え!えっ!?」


『ゼロくん、落ち着いて私たちはあなたの中に戻っただけだから』


「え?話せるの?」


『話せるよ。ゼロくんも声に出す必要は無いよ』


『そうなの?』


『そうだよ?』


心の中で思うだけで会話ができるようだ。


『安心しろ!呼ばれるまでは俺達は寝ているみたいな状態だからお前が何を考えようがこっちには伝わんないぞ!』


『ありがとう…』


一応俺のプライバシーは守ってくれるみたいだ。別に何かやましいことを考えたりするわけじゃないが一安心だ。


『じゃあ寝るわ』


『ゼロくん、おやすみ』


『おやすみ』


「ゼロ兄様?さっきから私の事は無視ですか?」


「いや!ごめん!無視していたわけじゃないよ!」


ソフィがそばで睨みつけていたからびっくりした。ユグ達と話す時には注意しないと。


「では帰りましょうか」


「あっ!ごめん。その前に教会に寄りたい」


あの神に言って称号の事をどうにかしなければならない。祈れば思いが届くかな?

そしてソフィにそう言った瞬間に何やら空気が変わった。


「っ!?」


「お兄ちゃん…教会に何をしに行くの?何かあったの?」


「いや!そんな特に何かあったわけじゃないよ!ただいい精霊が2人も契約できたから神様たちにお礼をしなけきゃって思って!」


「ふーん…そう」


ソフィが今まで見た事がない怖い顔をしていた。今まで俺はソフィに怒られたことはあったがそれとは比較にならないくらい怖い顔をしていた。目のハイライトは消えていて今にも誰かを殺しそうな顔だった。そしてなぜお兄ちゃん呼び?


「では教会に行きましょうか」


「あっうん。そうだね」


しかしもう先程の顔ではなくいつも通りの可愛い顔をしていた。本当にさっきはなんだったのだろうか?気のせいだったとでもいうのか?いくら考えても答えは出ないので考えるのをやめてソフィに手を引かれて教会に向かった。


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