第49話 前世の妹視点3

「まっ…はな…し……を…」


こいつの話なんて聞く気はない。なぜかこいつがお兄ちゃんを殺したやつだと分かる。ここで確実に息の根を止める。


「ま…だ…生き…てる……」


「え?」


何か重要な情報を言った気がして一旦手を緩めた。


「はぁ…はぁ…はぁ……佐藤零士は生きてる…」


「じゃあ早く会わせて」


こいつがお兄ちゃんを生きてるなんて言い出した。そしてなんか笑ってない?気持ち悪い…


「佐藤零士は転生して生きてる」


「なら私も早くお兄ちゃんのところに転生させて」


「それはできないの!規則的に!」


「いいからやれ」


しかしその後はだんまりを決め込んで俯いた。これでは埒が明かないし、情報が足りないので話を変えた。


「お兄ちゃんをなんで殺したの?」


「人の寿命は決まっててその日が寿命だったから」


私はそこまで聞いて頭をフル回転させていた。まずなぜ私をここに呼んだ理由を考えた。たまたま転生させたくて呼んだにしては都合が良すぎる。そして人の寿命は決まっている……ということは…。


「私は今日が寿命じゃないのに死んだから慌てて呼んだのね」


「な、なん!違っ!違うよ?」


「…殺すよ?」


「ガッ…ありがと…いや!ごめんなさい…その通りです」


見え見えの嘘をついたので緩めた手をもう一度握り直すと本当のことを言った。やはり私の推測は合っていた。きっと私はお兄ちゃんが一回目の植木鉢で死んでしまっていたとしたら、落とした女を殺して、死んでしまったお兄ちゃんに土産話を沢山作ってあの世で話題に事欠かないようにしてから死んだだろう。それなのにお兄ちゃんが不自然の神の力で死んだ。そしてその影響で元々自殺する予定なんてなかった私が自殺した。つまりお兄ちゃんの時に少し不安定になった神達の決めた理が私で完全に崩れてしまったというわけだ。それでその発覚を恐れて私をここに呼んだのだろう。


「早くお兄ちゃんのところに転生させて」


「規則でできないの!」


「私をここに呼んだ時点で規則違反しているんじゃない?」


「………」


かまをかけたがやはりそうだったようだ。それにしてもこいつは反応でわかりやすくて助かる。


「規則違反の一つが2つになったところで変わらないわよ?」


「でも……」


「いいからさっさとやれ」


「ガッ…は、はい!」


最初から素直にやると言えばいいのに。そうすれば首を絞められることは無いのに。馬鹿なのかしら?それとも単に首を絞められたいのかしら?


「でも…佐藤零士のようにスキルを一つ選ばせてあげることはできないからね…」


「なら私はスキル無しになるってこと?」


お兄ちゃんの部屋に無断でお邪魔した時に部屋にあった異世界系の小説は勝手に全て読んである。お兄ちゃんがどんな感じの子が好みかも把握している。好みは妹系の子が多かった。妹が特に可愛いと評判の小説や漫画を大量に紹介したかいがあった。


「生前にできていたことがスキルとして残るからスキルが0にはならないです」


「なら全く問題ないわね」


私はお兄ちゃんのためにあらゆる事をマスターしている。これなら転生してもお兄ちゃんのことを完璧にサポートすることができる。


「何か転生する時に希望はありますか?」


「お兄ちゃんの妹…いや、双子の妹にして」


普通の妹だと最低でも1年ほどはお兄ちゃんのサポートができない。それにもし学校なんかが異世界にあった時に私は年違いで離れ離れになってしまう。今度はいついかなる時も傍を離れずにお兄ちゃんのためだけに尽くせるようにしたい。そしてまた妹なら兄妹であるお兄ちゃんと結婚することができないのでお兄ちゃんへの色恋に惑わされずに贖罪をすることができる。


「他に希望は…?」


「あとはこれ」


「へぶっ!」


そう言って顔面を思いっきり殴り付けた。一応空手などの武道も習っているので上手に殴れた。


「今回は私も転生させることに免じてこれで許す。だけど…もし次に私のお兄ちゃんに何かしたら、どこだろうと追いかけて…必ず殺す」


「わ、わがりまじだ…」


「なら早くお兄ちゃんの元に転生させて」


「は、はい…」



こうして私はお兄ちゃんの双子の妹として転生した。ただ一つ誤算があったとするならば血の繋がった兄妹でも条件を満たせば結婚できるということ。そして私とお兄ちゃんがその条件を満たしてしまっていたということだ。


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