第35話 武器部門試験

「お?お前が一番乗りか!」


「お?まじで?」


実技試験の武器部門に行くとそこには暇そうに話している騎士たちがいた。


「よしっ!じゃあお前の相手は俺がやってやろう」


「よろしくお願いします!!」


そして俺の相手はなんと騎士団長になった。ちなみに実技試験は武器部門と魔法部門はどちらからやっても良かったらしい。俺は近かったので武器部門に来たけどソフィは魔法部門に行ったのかな?


「というかお前のテストをしてやれるやつなんてこの中で俺しかいないしな!」


「そんなこと言わないでくださいよ〜」


「ならテストできるか?」


「できませんけど言い方ってもんがー」


「なら文句いうな!じゃあゼロス!ここに上がれ!」


そう言って半径10メートル位の円状の簡易的な闘技場のようなものの上にに案内された。


「テストできないってどういうこと?」


「テストをするってことはつまり相手を観察して揚げ足を取れる余裕がなければならない。お前相手にうちの騎士達レベルだとそこまでの余裕はない」


「なるほど?」


テストができないとはどういうことなのか気になっていたのが解決した。


「テストできないって時点でもう武器部門は満点をあげてもいいが一応テストやるか?」


「もちろん!」


それで俺は置いてあった模擬剣を2本持って簡易闘技場に上がった。


「エンチャントって使っていいの?」


「ああ。口頭魔法以外は使っていいぞ」


「燃やせ!」などの言葉を魔法名の前に唱える魔法のことを口頭魔法、エンチャントのようにそれを必要としないのが無口魔法という。他の言い方では普通の魔法が口頭魔法、エンチャントみたいな特殊系の魔法?は無口魔法とも言える。


「いつでもいいぞ」


「風エンチャント!!」


そして2年間の成果を試す意味も込めて騎士団長とのテストが始まった。


「お前!随分と速くなったな!」


「それはありがとう!」


騎士団長は相変わらず巨大な大剣の模擬刀で相手をしている。そして前よりもスピードを活かせていて騎士団長は防御しかできてない。


「すまん!さすがにテスト前に誰かに負けたとなったら騎士団長としてもテスト監督としてもまずい」


そういうと俺の危機感知が反応したので急いで距離を取った。


「ブースト」


騎士団長がそう言うと体から少し赤みを帯びて心なしか筋肉も膨らんでいる気がする。

しかしやることは変わらないので再び攻めに行った。


「っ!?」


大剣が届くよりもまだ5メートル以上距離があるはずなのに危機感知が反応したので急いで右に飛び避けた。


ズドンッ!!


「おいおい…まじかよ……」


「前よりも判断が格段に早くなっている」


「団長!簡易闘技場を壊さないでくださいよ!」


騎士団長は闘技場のほぼ中央に立っている。そこから大剣を振り下ろして俺がいる場所に一直線に切れ込みを入れた。それを見て騎士たちが慌てている。


「10メートルも闘技場を割るのかよ…」


簡易とはいえ厚さは2メートル程はある。


「これが俺の家系のユニークスキルだ」


そしてブーストの効果は攻撃と防御を上げるというものだった。さすがに倍率までは教えてくれなかった。


「さて、どう攻める?」


「変わらない!」


いくら威力が強くても当たらなければ問題ない。今の俺ならよけることができるだろう。

そこからまた接近戦での戦闘が始まった。



「そこまで!!ストップ!ストップ!!」


「ん?」


「はぁ…はぁ……」


「闘技場が壊れるから…というかもう完全に壊れてるから!もう終わり!」


「わかりました。ゼロスここまでだ」


「はぁ……ありがとう…ございました…」


ドンッドンッという闘技場が壊れていく音を聞いてこの学園の先生が慌てて止めに来た。騎士団長がブーストしてから近距離で攻撃を躱し続けたのは5分ちょっとしか経ってなかったけどとても疲れた。

騎士団長はわざと闘技場を壊すように大剣を叩きつけて闘技場の破片を俺に当てようとしてきた。叩きつける力が強いので破片も10センチ以上もあり、俺はその破片の対処もしなければならなかった。そのため5分とはいえとても疲れた。もうあと5分もしたら動けなくなっていたと思う。


「それにしても……」


闘技場が本当に見る影もないくらいボロボロだ。というか原型を全く留めていない。ほぼただの瓦礫の山だ。


「じゃあゼロスは次の試験に行っていいぞ」


「はーい」


「武器部門のテスト結果に期待してていいからな!」


「わかりましたー」


正直ここまでやって80点に行かなかったら騎士団長と止めに来た先生に文句を言ってやる。


「魔法部門は…こっちか」


そして俺は魔法部門の試験に向かった。

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