第34話 筆記試験

「大丈夫?忘れ物ない?」


「大丈夫だよ」


「緊張とかしてない?」


「心配し過ぎだって」


ソフィの監視による地獄の勉強も終わって今日は王都に向かって家を出る日だ。そして受験終了からの1週間後に結果も出るため、次にこの家に帰るのはだいぶ先になるだろう。


「じゃあ行ってきます」


「行ってきます」


「「「行ってらっしゃい」」」


学園は4年間である。そのためもう卒業したアンドレイ兄様は家に帰ってきており、父の元で辺境伯を継ぐための勉強をしている。そして今日は父と母が不在で王都に行く。兄達の時は父がついて言ったが、俺とソフィで俺達は2人いるということで今回は父はついてこない。


「ではよろしくお願いします」


そう言って俺達は馬車に乗り込んだ。


「では始めましょうか」


「何を?」


急にソフィが始めると言ったがなんのことだか分からなかった。


「もちろん、勉強ですよ?」


「え…?」


「12歳になったら受験まで勉強頑張るんでしたよね?」


「うん…」


「なら頑張りましょう」


「はーい…」


そしてまた勉強地獄の一週間が始まった。


「ついた……」


そして王都についた。試験は2日後にある。それまでまた勉強をさせられるのだった。



「ゼロ兄様?」


「ん?」


「どうせなら合計得点で勝負しませんか?」


「勝てないからいいよ」


今は試験会場である学園に向かっている馬車の中での会話だ。筆記試験はソフィに教えてもらっている立場なのにソフィに勝てるはずがない。


「私だって武器部門は苦手ですよ?」


「まぁーそうだね」


ソフィの武器は片手で持てるサイズのメイスである。下手ではないがどうしても魔法がずば抜けているので、どこか見劣りしてしまう。


「それで敵前逃亡ですか?」


「わかったよ!やるよ!」


「それで罰ゲームは何にしますか?」


「負けた方が何でも言う事を聞くとかでいいんじゃない?」


「なんでもですね。分かりました」


そう話していると学園についた。受験会場は貴族と平民で別れている。平民と言っても家がある程度裕福な平民である。なので行商人などで成功した家庭がほとんどだ。子供を学園に入れる目的は貴族とのパイプを持つとか欲を言えば貴族との結婚をするためらしい。平民でも優れていれば受験料の免除試験というものもあるらしいがそこは詳しくは知らない。


「では私はこちらなので」


「じゃあまた後で」


そして筆記試験の部屋はソフィと違っていたので別々の部屋に別れた。


「…久しぶり」


「お久しぶりでございます。シャイナ様」


「む……」


同じ部屋にシャナがいた。しかし周りの目があるので馴れ馴れしく話すわけにはいかず、敬語で話したらシャナの機嫌が悪くなった。


「もしここで私が大声で「会いたかった…」とか言って抱きついたらどうなると思う?」


「ごめん、シャナ…許して」


「んっ」


そんなことになってしまっては色々とまずい。特にソフィの耳に入ったら……。そんなことにならないように小声で謝った。


「頑張って…」


「お互いな」


「ん…」


そう少しの会話をして指定されている席に座った。



「では試験時間は180分!終わったものから提出して次の試験会場に向かってください。不正行為をした場合はもちろん失格。そして来年以降の受験資格剥奪です。では始めてください!」


一応この学園は倍率が2倍以上あるので落ちる人はいる。もちろん来年に受験する人もいる。そしてこの国に学園は王都以外にもあるらしいのでそこに行く人もいるらしい。


(あれ?あれれ?)


問題を解いていくとだんだん疑問が増えていった。


(簡単すぎじゃない?)


簡単すぎるのだ。ソフィに教えてもらった部分はほとんど出てない。ソフィには基本の応用の応用を教えてもらっていた。しかし実際にこのテストに出ているのは基本、時々基本の応用といった問題しか出ていない。


(もう終わった…)


試験開始から30分で終わってしまった…。早過ぎると目立つかな?と思ったがソフィはもっと早く終わっていると思ったので提出して次の試験に行くことにした。


「まだ実技試験があるからね?筆記試験が出来なくても諦めちゃダメだからね?」


「あ、はい」


なんか試験監督に心配されてしまった。

見直しも3回はやったので大丈夫だと思う。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る