第19話 帰宅+別視点

「あー…楽しかったー…」


帰りの馬車の中で今日の出来事を振り返っていた。


「ん?」


こつんっと左肩に何かが乗った感触がしたと思ったらシャナが眠って俺の肩に寄りかかっただけだった。


「んん?」


すると逆側からも同じ感触がして見てみるとソフィも同じように寄りかかっている。


「ソ…いや…」


ソフィは起きてるよね?と聞こうとしたが余計なことを聞いて怒られたくはないので聞くのをやめた。



「ただいまー! 」


「ただいま帰りました」


「「「おかえり!」」」


そして気がついたら俺も寝てしまっていて起こされた時には家に着いていた。


「なんか食べれるものとれたか?」


「もちろんっ!」


「何が取れたんだ?」


「オーク!」


「「「は…?」」」


父は冗談で食べれる魔物が狩れたかを聞いてきたのだろう。しかしそれで狩れたと返したのでなんかの木の実でも取ったのか?というような顔をしていた。そして俺が詳しい説明をすると父と母と兄がとても驚いた。


「そこの騎士に手伝ってもらったのか?」


「いいえ。彼ら3人のみで倒しました。」


「「「……」」」


口をぽかんと開けて驚いている家族を見るのは面白い。


「じゃあ私はオークを解体場に持っていきます」


騎士がオークを持って行ってくれてそこで解散になった。シャナも夕飯を一緒にどうかと誘ったが王族のためうちだけに肩入れしているように見られてしまうのでダメらしい。


「じゃあまたね!」


次に会うのはもしかしたら入学の時かもしれない。


くいくいっ


手招きをして耳を貸せと言っている気がするのでシャナの方に耳を向ける。


「(次は俺にはシャナが必要だって言わせるくらいになるから楽しみにしててねっ)」


「え!それってどうゆう意味!?」


しかし聞いた質問には答えてくれずに馬車から手を振っている。


「はぁ…ばいばい」


それに俺も手を振り返すのを馬車が見えなくなるまでやった。


「はぁ…」


恐らく後ろでじとーっと見ているソフィがいるのだろう。振り返りたくない…

そしてその後は予想通りソフィに叱られて家族にオークを倒したのを褒められ、みんなでオークを食べた。オークを食べるのは抵抗があるかと思ったがそれはなかった。昔に美味しい肉があると思ってこれ何の肉?と聞いた時にオークだよ。っと言われて驚いた記憶がある。そしてその後は疲れていたので泥のように眠った。そして朝起こされて馬車に乗って王都を後にした。






**************

(別視点)


「それでどうだった?」


儂は騎士団長に今日の感想を聞いた。


「まずソフィア様ですが現時点で基本魔法のスピアまで使いこなしています」


「なんと!」


わずか8歳ながら魔法を使えると言うだけでも天才と言って良い。しかも8歳でスピアまで使えるとなるとこの国でも両手の指で収まるくらいの数しかいないだろう。


「そしてシャイナ様は私でも意識してみなければ見失うことがあるくらい隠密系スキルが優秀です」


「お主でもそうなるか…」


この年で一瞬でも騎士団長の目を欺けるのならそれは素晴らしい才能だ。


「それでゼロス様ですが……」


「む?どうかしたのか?」


ゼロスのことになると急に黙ってしまった。


「あれは正直規格外ですね」


「ほう…」


こやつにそこまで言わせるほどの人材なのか。


「今日はオークまで出現しました」


「なんと…」


あの森の浅い所にオークがいたのか…これは冒険者ギルドに調査の依頼をした方がいいかもしれない。


「じゃあそこでお主が手を出して終わったのだな」


「いえ…3人だけでオークを仕留めました」


「なんだと!」


儂は驚いて大声を出してしまった。しかしあの3人のみでオークを狩れるのか…


「そこでゼロス様はオークのすぐ側で囮をしていました」


「それは本当か…?」


「はい」


なぜ初心者が皆、オークで躓くかと言うと脂肪が多いからもあるが最大の理由は攻撃が一発当たるだけで死ぬ可能性があるからだ。それも8歳の子供ならどこに当たろうが死ぬ可能性はある。それゆえ容易く近寄らず、決定打が打てないからだ。


「そんな至近距離で他の誰にもヘイトが向かわないように剣と魔法で攻撃していました」


「本番に強いのか…」


確かに8歳でそこまで技術があるものはいるだろうが死ぬかもしれないというその状況下でその力を発揮できるものはいないだろう。確かに規格外だ。


「いえ。そうならまだ良かったです…」


「む?違うのか?」


「はい。例えば国王様が国民皆の前で的に向かってファイヤボールを放つのに緊張しますか?」


「しないだろう……。ま、まさか…」


まだ魔法に慣れていない子供ならば間違ったところにいって怪我人が出たらなんて思うかもしれないが儂がファイヤボールごときで緊張することは無い。しかし今の例えで騎士団長に言わんとすることがわかってしまった…


「はい。ゼロス様は緊張に値しない当たり前のことのようにオークの相手をしていました」


「………」


「きっとトロールが相手でも魔力が持つ限りは同じように攻撃を避けることはすでに出来ると思います」


「つまり何らかのスキルを持っていると?」


「その可能性が高いと思われます」


騎士団長がそういうのなら本当にトロールでもできるのか…1人でならAランクの魔物でも時間が稼げるというのか…そんな人材は大人を含めても数えるくらいしかいない。


「入学が楽しみだな」


「それにつきまして少しお願いがございます」


「なんだ?」


こやつから儂に願いを言うなんて珍しい。


「その時の実技の監督官を私が務めたいのです」


「ほほう…よかろう。そうしておこう」


「ありがとうございます」


「ご苦労だった。下がって良いぞ」


「はっ!」


これは天狗になり始めている儂の息子や娘にいい刺激になってくれるだろう。4年後が楽しみだ。

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