実証2 おとぎ話
むかしむかしあるところに、お爺さんとお婆さんが住んでおりました。
お爺さんは山へ柴刈りに、お婆さん川へ洗濯に行きました。
お婆さんが川で洗濯をしていると、川上からどんぶらこどんぶらことそれはそれは大きな桃が流れてくるではありませんか。
「こりゃ、たまげましたね」
お爺さんと食べようと思ったお婆さんは、桃を持ち帰ります。山から帰ってきたお爺さんは桃のその大きさにとても驚きました。
「すぐに食べましょう」
「ああ、そうしよう」
お爺さんが鉈で桃を割ると、なかから玉のように可愛く元気な男の子が飛び出してきました。子どもの居なかった二人はそれはそれは喜んで、桃から生まれた赤子に桃太郎と名付けて大切に育てることにしました。
桃太郎はすくすくと育ちます。しかし、普段は元気な桃太郎がとても悲しそうな顔をしていることを心配になった二人が桃太郎に尋ねてみると、桃太郎はこう言いました。
「遠き地にて鬼が人を苦しめていると聞きます。お爺さん、お婆さん、いままで育ててくれてありがとう。僕は、世のため人のため、鬼ヶ島へ鬼退治にいきます」
桃太郎の覚悟に、お爺さんとお婆さんは感動します。
桃太郎の旅のために、お爺さんは大切な刀を渡します。
桃太郎の旅のために、お婆さんは心を込めて黍団子を作ります。
日本一と書かれた旗を背負い、桃太郎は鬼退治へと向かいました。
「桃太郎さん、桃太郎さん。貴方の腰の美味しそうな黍団子。どうかひとつわたしにくださいな」
旅の途中で出会った犬が桃太郎に話しかけます。
「良いでしょう。ですが、僕は鬼ヶ島へ鬼退治に行くところです。もしも家来となって共に鬼退治をしてくれるというのならこの黍団子をあげましょう」
「お安いご用です。どこまでもお供しましょう、桃太郎さん」
犬が家来に加わりました。
そして、猿とニンジャをも仲間に加えて桃太郎は鬼ヶ島が見える浜辺へとたどり着きます。
「桃太郎さん、桃太郎さん。鬼ヶ島が見えましたよ」
「見てください。この大海原を。如何にして鬼ヶ島へと渡りましょう」
犬と猿が頭を抱えます。すると、ニンジャが言いました。
「拙者にお任せあれ」
ニンジャが近隣の漁村へと出掛けると、湧き上がる悲鳴ののちに村から音が消えていきます。桃太郎が心配になって見にいこうとするとニンジャが立派な手漕ぎ船に乗って戻ってきました。
「その船はどうしたのでしょう」
「鬼退治に行くことを伝え申したところ、喜んで貸してくださりましたぞ」
桃太郎は船に乗り込み鬼ヶ島を目指します。
猿が漕ぎ、犬が船頭を務め、ニンジャは海上を走ります。
「桃太郎さん、桃太郎さん。鬼ヶ島が見えましたよ」
「見てください。あの大きく頑丈な門を。如何にして鬼ヶ島へと入りましょう」
犬と猿が頭を抱えます。すると、ニンジャが言いました。
「拙者にお任せあれ」
ニンジャはひとっ飛びで巨大な門を飛び越えます。湧き上がる悲鳴ののちに鬼ヶ島から音が消えていきます。桃太郎が心配になっているとニンジャが返り血で真っ赤に染まって戻ってきました。
「鬼たちはどうしたのでしょう」
「あまりにも殺り易かったところ、一匹残らず首を刎ねておきましたぞ」
桃太郎は鬼ヶ島へと上陸します。
惨殺された鬼の骸に、猿が目を塞ぎ、犬が鼻を曲げ、ニンジャは殺し足りぬと骸を斬り刻みます。
「桃太郎さん、桃太郎さん。大きな倉が見えましたよ」
「見てください。あの光り輝く金銀財宝を。如何にして鬼ヶ島から持ち帰りましょう」
犬と猿が頭を抱えます。すると、ニンジャが言いました。
「拙者にお任せあれ」
ニンジャは呪を唱えます。途端に金銀財宝とニンジャが姿を消すではありませんか。桃太郎が驚いていると、遠くから声が聞こえます。
「今時黍団子一つで働くは阿呆でありますぞ。これらは正当たる報酬として頂いておきましょう」
ニンジャが一人で船に乗り込み鬼ヶ島から出て行きました。
残された桃太郎は荒れ狂う海が取り囲む鬼ヶ島から出ることはついぞ叶いませんでした。
めでたし。めでたし。
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