第5話浮気者への報い(証言者・伊藤柊)

私は伊藤柊いとうひいらぎ、二十七歳。

私には彼氏がいた、三年前までね。

彼氏の名前は水谷正志みずやまさし、出会いは今から七年前の合コンで。

彼はIT系企業に勤めていて、容姿は特別イケメンという訳ではないけど、おおらかでサッパリした性格。

何より自分から率先して動く人間だった。あの合コンの会食費も割り勘だったのを、水谷が全額払ってくれた。

水谷と付き合っていたのは本当に幸せだった・・・。

でも付き合ってから相手の本性を知るというのは本当だった。

水谷と同棲して三年たったある日、水谷が忘れていったスマホが鳴った。

私が出ると女の声が聞こえた。

最初は仕事の同僚かと思ったけど、相手の女は水谷と付き合っていること言った。

私はスマホを切ると、涙がとめどなく溢れてきた。

その日の夜、帰宅した水谷を問い詰めると、水谷はケロリと言った。

「女は男に養ってもらうものだろ?柊も絵美えみ(水谷の浮気相手)も俺が稼いだ金で充実した生活ができる、だったら他に女がいたって目を瞑るのが筋だろ?」

私は頭がカッとなって水谷と口論になった。

水谷の自己都合な弁論が、私の熱愛感情を冷ました。

そして私と水谷は破局した・・・。







水谷が車で出ていってから数分後、私のスマホが鳴った。

「柊、水谷が事故に遭ったみたいなの!」

友達からの連絡だった。後で破局したこと伝えなきゃいけないと思った時友達が、

「それで信じられないことだけど・・・、水谷が消えた。」

と告げた。

友達によると水谷は例の十字路で事故を起こしたという。

本当なら酷くショックを受けるところだったが、当時の私は「因果応報だ」と水谷を心の中であざ笑った。





事故から三日後、水谷が見つかった。あの十字路の電灯が無い角でだ。

水谷はいつの間にかどこか知らない異次元空間にいて、自分の車を運転する顔に大怪我を負った女子高生に、追い回されたという。

こんなことされたら、私だって恐怖でおかしくなる。

水谷もそうなった。異次元空間から生還した水谷は、トラウマで仕事中のミスが重なり、やがてクビになったと友達から聞いた。

例の十字路は通りたくないが、浮気者の水谷に制裁を加えてくれたことには感謝している。




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