第2話暴走族のトラウマ(証言者・板垣権田)

俺は板垣権田いたがきごんた、三十三歳。今は真面目に働いているが、二年前まで暴走族だった。

元治げんじ泰利やすとし正也まさやの三人と一緒に、夜の町中を爆音を鳴らしながらバイクで走り回った。それは凄く痛快だった。

事件はそんな時に起きた。

午前一時、いつものように四人で走っていたら、パトロール中のパトカーに見つかってしまった。

捕まるものかと逃げていた時、例の十字路に差し掛かった。

俺は三人に「この十字路でバラバラになるぞ!」と指示、三人は俺の指示に従った。

俺は十字路を左に曲がった。

するとその直後に「ガシャーン!」という音がした。

俺は慌てて十字路に戻り、今度は右方向に曲がった。

すると泰利の乗っていたバイクとパトカーが衝突し、事故になっていた。

近くに元治がいた、恐怖で顔が青く引きつっている。

俺はバイクから降りて元治に訳を訊ねると、元治は震えながら言った。



「俺、ヤス(泰利)と並んで走っていたんだけど・・・、十字路を過ぎた直後にヤスの方をみたら・・・、バイクにヤスが乗っていなかったんだ!!」




俺は恐怖で絶句した、しかしあの噂が本当であるはずが無い。

当初の俺はそう思った。

俺と元治と正也は警察に連れられ、取り調べと説教で警察署に一時間拘束された。





しかし六時間後、俺は泰利に電話をかけたが、泰利は出なかった。

しかも元治によると、泰利は昨日から帰宅していないという。

俺はあの噂・十字路の都市伝説を思い出した。

あれはまさか本当なのか・・・?





それから二日後、警察から泰利が見つかったと連絡が入った。

元治と正也と一緒に警察署へ迎えにいった、ところが泰利は突然「チームを抜けたい」と、土下座しながら懇願した。

俺が訳を訊ねると、泰利は言った。



「十字路を走り抜けると、俺は何故か異次元空間にいたんだ。そこで恐ろしいものを見た。俺が乗っていたバイクに、顔に大怪我をした女子高生が乗っていたんだ!しかもそいつはゲラゲラ笑いながら、俺に向かって突っ込んでくるんだ!俺は怖くて走ったけど、逃げ切れずに「轢かれる!!」と思って目をつむって、そして目を開けたら十字路の電灯が無い角に俺は立っていたんだ・・・。」




俺と元治と正也は、泰利の体験談に悪寒を感じた。

それから直ぐに俺達は暴走族チームを解散した。

その時のバイクは今もあるが、あの十字路は二度と通らない事を心に誓ったよ。

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