第20話 十階層へ遊びに行く

 こちらの生活にも慣れてきた。毎日ゴロゴロして、図書館で借りた本を読んだり、卵を拾ったりハーブを摘んだり、露天風呂に入ったり。マリンをこねこねしたり、シロくんをブラッシングしたりしています。お日様に干した毛皮は、いい香りがするんだなあ。


 これぞスローライフ! なのである。

 しかもにゃんジョンの中だから、普通のスローライフにありがちな、虫や天気との戦いもなく、完全にスローライフのいいとこ取りなのである。


 それでも、少し飽きてきたので、シロくんに頼んでにゃんジョン探検に行くことにした。


「まずは一階層から順に攻略して行った方がいいかな? それとも、いつもの貢物を分けてくれる十階層にご挨拶に行った方がいいかな?」

「全部攻略すると時間がかかるから、とりあえず十階層でいいんじゃないか?」

「ふむ。じゃあ、十階層に行こう!」

「よし、じゃあ俺に掴まってくれ」

「うん、わかった!」


 ライオンサイズの猫型シロくんの首にギュッとしがみつく。わぁ〜お日様のいい香りで、モッフモフのふわふわだなぁ〜。

 思わず首の辺りに顔を埋めてクンクン嗅いでいると。

「あ、アミっ!?」と、焦った声が聞こえた。


「あ、ごめんごめん。だって、あまりにもモフモフだから、つい」

「お、おう……。とりあえず、十階層に行くぞ?」

「は〜い!」


 首に回していた腕をギュッと力を込めると、シロくんの体が少し強張った気がした。あれ? 力入れすぎちゃったかな?


 そう思っているうちに、気付けば周りの景色が変わって、十階層に立っていた。

 

 十階層にたどり着くと……。

 そこにはシュッとした、高貴そうなカッコいい猫がいた。地球で言う、ロシアンブルーみたいな感じだ。グレイの艶々な毛並みに、エメラルドグリーンの目が素敵! 引き込まれそうだ。


「あれ? シロ……と。可愛いこねこちゃんも一緒だね?」


 ふらふらと引き寄せられそうになるが、シロの尻尾に阻まれた。ここで迷子紐〜?


「ふふ、シロったら、束縛男だね?」

 なんだか、仕草や声ひとつひとつから色気が出ている。なんなのだ、この猫は!


「こんにちは、わたしはアミです。従魔のスライム、マリンと、シロくんと百階層に住んでます」

「おや? そうか。だから最近。シロはボクへの貢物を持って帰ってたんだね」

「あっ、あの、頂いてしまってすみません!」

「いいんだよ、ボクだけじゃあ食べきれない量が毎日届くからね。有効活用してもらえて何よりさ」


 そう言いながら、ウインクをしてくれた。猫なのに器用である。それにしても、さすがの接待力である。

 これは市民に人気なのも納得だ。

 もし誰かが攻略を重ねて、百階層まで来たら、うちのシロくんは、こういうおもてなしが出来るのだろうか……!


 チラリとシロくんを見る。でもこの、フワッフワの白い毛並みが誰かに撫でられるのも嫌だな〜!!!

 そう思ったら、自然と自分の尻尾がシロくんに巻きついていた。この尻尾、地球では自分になかった部位だから、思わぬ動きをして興味深い。って、一応、洋服の一部なんだけれどさ……!


 シロくんを見ると、目を見開いて口をパクパクしている。どうしたんだろ?


 

 

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