第16話 【ニャン吉視点】番なのか…!?

 バレてしまった……。バレてしまった! アミに、俺が人型になれるってバレてしまったー!


 いつか言わなくちゃって思ってたけど。黙ってお風呂に一緒に入ってたこととか、思い出して口も聞いてくれなくなったらどうしよう……。

 今更ながら、秘密にしていたことを後悔してへニョンとしていた。アミ、なんて言うだろうか……。


 そう思っていたのに。

「この尻尾はニャン吉と同じ……」


 あろうことか!尻尾を掴んだのだ!

 獣人が人型の時の尻尾や耳は、とっても敏感なのだ……。


「しっぽは……っ。簡単に触っちゃいけないところなんだ……っ」

 息がとぎれとぎれになる。


「ご、ごめん、痛かった!? 尻尾は弱点かなにかなの!?」

「弱点……。弱点と言えば、弱点だ……」


 うう……。顔が真っ赤になっているのが自分でも分かる。


 その後、この姿の俺も俺だと認識したアミは、いろんなことを思い出したのか、赤くなったり青くなったり百面相をしていたが、怒られなかった。


 今日からお風呂も一緒に入れないのかな。寝るのも別々かな。あ、アミの家、ベッドひとつしかないし……。俺はまた野宿か……。


 そう思っていたら、あちこちから、俺たちを見て、あれこれ言っている声が聞こえる。


「見てあのイケメン!」

「あの腕に抱かれたい!」

「お腹のあれは何?」

「もしかしてスラにゃんじゃないかしら?可愛い~ぽよぽよしたい~」

「しろねこのお嬢ちゃんも可愛いな」

「あの服装で分かりづらいが、あの嬢ちゃんなかなかの巨乳だぞ」

「脱がせてみたいな」

「そうだな」


 アミが可愛いのは分かる。だが! 脱がせていいのは俺だけだ! いや、俺もダメかもしれないけど!

 白猫着ぐるみを着ていないアミを知ってるのは俺だけでいいのだ! 声が聞こえてきたほうを、ギロリと睨んでおく。牽制しなくては。


「人が多いから、はぐれないように手を繋いでおくぞ」

 そう言って、アミの手をとる。今まで肉球マッサージはしてもらっていたけれど、人型の手でにぎると、気持ちいいな……。


 ハッ。そうだ。牽制。牽制。

 自然と尻尾がぐるりとアミに巻きついた。

 獣人が番に尻尾を巻きつけているのをよく街で見ていたが、まさか自分がやることになるとは。


 ……番? あれ? もしかして。

 いや、もしかしなくても、アミって俺の番?

 ちょっと待てよ、脳が追いつかない。いや、でも尻尾は素直だ。尻尾が番だと認めている……。


 そう思って悩んでいたら、アミの尻尾が俺にぐるりと巻き付いた。

「!!!!!」

 まさかアミも……!?やばい、顔が自然とニヤけてしまう。


 そう思って彼女を見ると、彼女は前を見て、せっせと歩いていた。

 ……。うん。分かってた。あれだろ? 地球で言う、迷子紐程度にしか考えてないんだろ?

 分かってた。分かってたよ……。


 段々悲しくなってきて、冒険者ギルドについてずんずんと進む。ギルドに来るのは十年ぶりだ。

 未だにリアムの野郎がギルマスだった。


 嬉しいことに、アミの称号に、「白猫姫」が増えていた。「白猫王子」の二つ名を嬉しいと思ったのは初めてだ!


 アミがパーティーについて説明を受けている。アミが変なやつとパーティー組むことになったら嫌だからな。


「パーティー組むぞ」

「いいの? 誰とも組まないっていうポリシーがあるんじゃないの?」

「アミならいい」


ニヤニヤしながら見ているやつらをギロリと見る。


「そりゃなあ、あれだけ尻尾巻きつけてるんだからな」

「束縛男だな」


 束縛男……俺は束縛男なのか!? 悩んでいる間に、パーティー名が『ニャンズ』になった。


 その後、アミはハーブや薬草、卵やらを売っていた。

 いつの間に採集していたんだ??

 っていうか、にゃんジョン産は、なかなか高値で売れるんだな~。いくらでも生えてくるし、にゃんジョン活性化に良さそうだ。

 今はあんまり人気のないダンジョンだからな。

 まあ人気が出すぎて100階層まで来るやつがいたら困るけどな。今は俺とアミと、おまけのマリンの住処だしな。


 アミは、ゆで卵を配っていた。あれ、半熟とろとろで美味しいんだよな~。あいつらビックリするぞ。



 そして、図書館へ移動してきた。あまり人もいないし、ここなら別行動しても大丈夫だろう。

 俺も借りたい本があるしな…。


 獣人コーナーへ行く。うむ。このあたりを借りよう。

【この人は運命の番!?】

【番を見つけた獣人に起きる変化】

【人間と獣人の番が気をつけること】


 アミに見つからないうちに、貸出手続きをする。受付のマリーは、タイトルを見ても何も言わず、あえての無表情で対応してくれた。

 彼女はプロだ。信用できる。

 やばい、アミが近づいてきた。貸出手続きの終わった本を急いで亜空間にしまう。ふう……危なかった。


 アミの本の貸出手続きをする。ふんわり、本当に、ふんわりだけど、違う男の匂いがする。

 くっ、この短時間に誰が接触してきたというのか……!?

 図書館内をぐるりと見るが、誰もいない。

 あまり離れないようにしなくては。まずは本を読んで勉強だな……。人間と獣人では違うことも多いからな!


 本をしまい終えたアミの腰に尻尾を巻きつける。アミは俺のだぞ!!!

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