第14話 にゃんジョン産はすごい

 Fランク冒険者は、一ヶ月以内に依頼を三つ達成させなくてはいけないということで、早速依頼をいくつか見てみる。

 ふむ。


 ハーブや薬草の採取、たまごの採取などが、常時依頼である。これってもしかして……。


「セリーナさん、この常時依頼は、今から取りに行かなくても、既に持っているものでも大丈夫ですか?」

「もちろん、大丈夫ですよ~!」


「じゃあ、これらで依頼達成になりますか?」

 そうして、ポケットから、ハーブや薬草、卵を、わさわさと取り出す。あっ、これはゆで卵だった……えーっと。生のはこっちだ。

 この前、色々と採っておいて良かった。


「そのポケット、どうなってるの……!? 生卵なんて入ってて割れないのかしら!

と、とりあえず、見せてもらうわね。こっこれは……! アミちゃん……。これらは、どこで見つけたの!? どれも最高品質のものばかりよ!」


「それは全部にゃんジョン産です~。いっぱい生えてましたよ。卵もあちこちに落ちてますし」


「にゃんジョンだと!? あの猫に貢ぐだけという噂のダンジョンか?」

 ギルマスから不穏な言葉が聞こえる…。


「貢ぐって一体……」


「確か十階層のダンジョンボスが、すごくイイ女で、落とすために皆貢いでいるらしいぞ」


「イイ女……落とす…?」


 よく考えたら、にゃんジョンに住んでいるのに、百階層以外は行ったことがないし、何も知らない。


「ニャン吉、どういうこと?」


「今度会わせてやるが、十階層に住んでいるやつは、どうやら人間たちに人気の容姿をしているみたいなんだが、気まぐれなせいで、まだ誰も攻略できてないんだ。それで、皆躍起になって、貢いでる」


「おお……」


「あそこのダンジョンは難しいが危険はないからな。日々の癒しを求めて、冒険者じゃない層がちょこちょこ潜ってるんだ。だから、こういうハーブや薬草が生えてるっていうのは知らなかった。これはギルマスとして周知させたい案件だな」


「まあ、にゃんジョンが人気になるのはいいことだね! セリーナさん、これら全部で依頼は達成になりますか?」


「アミちゃん、もちろんよ! これでGランクにアップ! ギルドカードをここにかざして。そう。はい! これでカードはGランクに更新されたわ。そして、これが買取金よ」


「わあい! ありがとうございます!」


 ついに、自分でお金を稼いだぞーーーーー! 嬉しい。そっとポケットにしまっておく。


「また、街にくるときは色々と採ってきますね!」


「こんな高品質の品はなかなか手に入らないからな。じゃんじゃん持ってこいよ!」


「そうします! あ、これ、お近づきの印です。にゃんジョンさんの卵を、茹でただけなんですけど、半熟とろりで美味しいですよ!」

 セリーナさん、リアムさん、ルーカスさんに渡す。


「ただの、ゆで卵か…?」


「美味しい卵なので、シンプルに茹でるだけでも美味しいんですよ。半熟具合を極めたやつなので、美味しいはずです。では、また来ますね~!」


 よおーし。次は図書館だ! 楽しみだなあ~☆



……その頃、ニャンズ一行が去ったギルドでは

「な、なんだ、このゆで卵は! 美味しすぎるーーー!」

「キャッ、これは私のですからねええええ!」

「さっきあいつらが売った生卵はどこだ! ギルマス権限で俺が買い取る!」

「いや、ここはギルド嬢のわたくしが!」

「いやいや、ここはいつも頑張ってる冒険者の俺が!」

 と大騒ぎになっていたのでした。


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