第4話 にゃんジョン・ウォーターと、黒パンのオープンサンド
お昼寝から起きたら、夕方になっていた。
にゃんジョンは屋内なのに、ちゃんと太陽があって、屋外みたいだ。
すごいぞ、にゃんジョン。
ちょっとヨダレがたれていた。ニャン吉の上に。こっそり拭いておいたけど、バレている気がする。
わたしが、ごそごそしていたらニャン吉も動き出した。
「おはよお~」
「おはよう、アミ」
「なんか、喉乾いたな~。ニャン吉、お水無いの?」
「そこに湖あるだろ。その水、飲み水にできるくらい綺麗だぞ。常に浄化されてるんだ」
おお!さすがにゃんジョン!
「カップ!」
右手をかざして唱えてみれば、右手にはやっぱりカップがあった。お水用だからグラスのイメージで作ったら透明のカップになった。
湖の水をカップですくって、太陽にかざしてみる。キラキラ。本当に濁りのないキレイな水だあ~。ごくっ。
……! おいしい! いつも飲んでいた水道水とは大違いだ!
これ水飲むだけで元気になりそうだね。なんかこの湖の水って、特別なんじゃないの?
だって、にゃんジョンだもん…。
そうだ。鑑定スキル、使ってみよ~っと。
「鑑定!」
【にゃんジョン・ウォーター】
にゃんこセレクション1位受賞のお水。
飲めばカラダの内側から、浴びれば外側から綺麗になる。
おお……。にゃんこセレクション!
これは素敵。たくさん飲もう。お水は一日二リットル飲んだ方がいいって言うもんね。
「ねえ、ニャン吉~。お腹すいたよ~。」
「ほんと、お前はマイペースだな…。異世界一日目なのに……」
「異世界だろうとなんだろうと、お腹はすくんだよ~。今までさんざん、ごはん食べさせてあげたでしょう!」
「うっ……。ちょっと待ってろ。」
そう言って、突然消えたニャン吉。
あれ? あれ? とキョロキョロしていたら、次の瞬間、大きな籠に、たくさんの食べ物とニャン吉が入って現れた。
「おおうっ。ビックリしたあ~。なになに?これどうしたの?」
「これは十階層の仲間のところから、取って……いや、もらってきたぞ!」
今、取ってきたって言おうとしなかった? まあ、いっか。
それよりごはんだもんね~! 籠の中をチェック!
「なになに。黒パンに、チーズとハム、野菜とフルーツ。ふむ。」
よし。ごはんの準備だ!
なんだかにゃんジョン・ウォータのお陰か、力もみなぎってるし、ちょっとだけアレンジしようかな。
まずは、まな板ね~。まな板、まな板。わたし、土魔法使えるんだもんね。
こう薄くて、まな板みたいなやつをイメージして~、えいっ!
おお、出来た…。大理石みたいなやつ、できたぞ。
「ナイフ!」
魔力でナイフを作って、まずは黒パンを薄切りにして。腹ペコすぎるので、一枚口に放り込んでもぐもぐしながら調理開始だ。
ちなみに、日本のふわふわパンも美味しいと思うけど、こういう噛めば噛むほど味が出るような素朴なパンってわたしは好き。
パンに、ハムと、角切りにしたトマトもどきをのせて、チーズをのっけて。
火魔法で、チーズをとろとろにして、パンは外側クリスピーに。
この大理石もどきのまな板、なかなか便利だ。このまま鉄板みたいにもなるんだもの。
「完成~!」
「やった~!」
食べるき満々のニャン吉。
土魔法で、ピクニックテーブルとベンチを木の下に設置して、ハムチーズトーストと、フルーツを並べる。
当たり前のように、ニャン吉が向かいに座ってる。
うん、座ってる。なんか、気がついたらトラサイズになっていたニャン吉。
白猫着ぐるみのわたしもどうかと思うけど、トラサイズの白猫がピクニックテーブルについてるってのも、なんか違和感。
まあ、異世界だもんね! なんでもありだよね!
「「いただきまーす!」」
むしゃっ。はふはふ。
「「うま~い!」」
調味料がないからどうかな?って思ったけど、ハムの塩気と、チーズの油分で良いバランス。
このトマトもどきも、しっかり太陽浴びましたっていう感じの濃い味だ!
地球にいるときは、ニャン吉は猫だから、アイスも人間の料理も、ちょびっとしかあげてなかったけど、なんか何でも食べるみたいだし、猫だけど猫じゃないみたいだ。
「ニャン吉~」
「なんだ?」
「ビックリしたけど、巻き込んでくれて、ありがとね。あのまま、社畜人生送ってたら、どこかで壊れてたかも。こうして、のんびりする時間って大切だなーって、本当に思うの」
ニコッと笑いながら、ニャン吉にお礼を言う。
「おっおう……。俺も……。ありがとな! 指輪なくして帰れなくなって困ってて、でもお前が家に置いてくれたから助かったんだ!」
それって、わたしが指輪を捨てたせいなんだけど……。まっ、結果オーライ☆だよね!?
湖に沈む太陽を眺めながら、のんびり夜ごはん。はあ~生き返る。
いっぱい食べたらまた眠くなってきた。陽も沈んで、星と月がたくさん出てきた。すごいな、この空、どうなってるんだろう。
「ニャン吉は、いつもどこで寝てるの?」
「俺か?俺は、いつも、そのへんで寝転がって寝てるよ。ここは俺の縄張りだから、誰か入ってきたら分かるしな」
むむ。つまりベッドがないってこと…?
寝床作らなくちゃ…ああ、でも眠くなってきた。
「ニャン吉、今日はお布団がないから、一緒に寝かせてね。なんかちょうどよく大きくなってるみたいだし。」
「えっ」
驚いたニャン吉の尻尾はそわそわ、ゆらゆらしていたけれど、寝転がっていたニャン吉の横に潜り込んで、ふわふわを堪能しながら眠りについたのだ。
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