第2話 妖精みたいな猫神様から、加護をもらったにゃ!チートだ!

「シローーーー! どこに行ってたんじゃ! お主の仕事は、にゃんジョンの百階層の見守りだぞ! 久しぶりに見回りにきたら誰もいなくてビックリした。無理やり強制召喚をかけてみたが、異界なんぞにいたのか?」


 声が聴こえてきたほうを見ると、金色にピカピカ光る妖精さんが、ふわふわと飛んでいた。

 ゆるふわロングヘアーに、白いワンピース。そして、猫耳に、バタンバタンと動く尻尾。

 喋り方は古臭いのに、見た目は十五歳くらい。


「きゃーーーーー!可愛いの!可愛いの!かわいいかわいいかわいい!」

 ついつい興奮して、騒いでしまった…。


「ぬっ!お主!人間か!? よく見たら、シロをポケットに!? あの百階層の難攻不落のシロを手なづけたというのか!?なにものじゃ!?」

 

 イライラしながらパタパタしていた尻尾が、フシャーーー! と膨らんだ。

 美少女ねこ妖精さんに警戒されてしまった……。


 今までだんまりしていたシロは、素早くポケットの中からアイスクリームを出した。


「こちらを猫神様に差し上げるべく、少しの間留守にしておりましたっっっ。異界のとても美味な甘味でございます。」


 と言いながら、一番安いアイスクリームを差し出した。サイズ的には1番大きいんだけど。

 おい、ニャン吉よ…。それ絶対わざとだろ。

 こちらをチラリと見て、「余計なことは言うなよ」と目で合図してくるニャン吉。

こいつ見た目の白さとは裏腹に、なかなか腹黒だったのか…!


 それを受け取った猫神様(妖精さんじゃなかったのね)は、不思議そうに見つめながら、どこからか出した銀のスプーンで一口食べた。


「む!むむむむむむ!!!!!この滑らかかつコクのある甘味!美味じゃー!美味じゃああああ!」


 嬉しそうにしながら、パクパク食べる猫神様。

 そんなに小さな体で、そんなにたくさん冷たいの食べたらお腹壊すよ……?神様だからいいのかな?


 アイスに夢中になっている猫神様を目の端で見つつ、周囲をぐるりと見渡す。


 わたしたちは今、登りやすそうな大きな木の下にいて。

 大きな湖が目の前にあって、草花が咲き乱れていて、空が青くて、どう見たってわたしの部屋じゃない。


 さっき猫神様は『異界』って言ってたし、なんか猫神様は猫耳の妖精さん風だし、ニャン吉喋ってるし。

 うん。異界だ。そうだ。異界だ。

 そっかー異界かー。これが噂の異世界転移ってやつなのかなー。

 わたし、変に冷静だなあー。


 ぼーっと考えていたら、猫神様が、あっという間にアイスを食べ終わっていた。シロはいつの間にか、草の上に寝転んでいた。

 そのアイス、あの小さな身体のどこに入ったのか!神様だからいいのか!?


「ふうー。満足じゃ!」

 ニコニコと嬉しそうにしている猫神様を見ると、一番安いアイスだったのに……とちょっぴり申し訳なくなってくる。


「さて、お主。 そのポケット、シロが入ってなくても膨らんでいるが、先程の甘味はまだ入ってるのか?」


 ニヤリと、こちらを見る猫神様。


「そうですね~。アイスクリームって言うんですけど、あと十個くらい入ってます。でも、冷凍だから、溶けてきちゃうかも。いっそのこと、今全部だべちゃいます?」

「待て待て待てー!そんなもったいないこと、してはならん!」

 言い終わるか終わらないかのタイミングで、神様が魔法ステッキみたいなものを降った。


そうすると、お腹のポケットが光った!


また光ってるう~ひい~。

そして光が止んだ。


「お主のポケットを亜空間に繋げたぞ。荷物入れ放題のポケットじゃ~。初回に限り、中に入っていたものはいくつ取り出してもなくならないようにサービスしておいた!

 『あいすくりいむ』が溶けないように、時間経過もしないようにしてあるぞ。お礼は『あいすくりいむ』でいいのじゃ☆」


 えっ! あの、誰もが憧れる未来のポケットが! この恥ずかしい白猫着ぐるみに!? これ着てる前提!?


「それからお主、よく見たら可愛い白猫の服を着ているな……。むーん。よし! 出血大サービスじゃ! この素晴らしい猫神様の加護をやろう! そ~れ!」


キラキラキラ~っと光が降ってきた。


「『ステータス オープン』と言ってみよ。お主のステータスが見れるぞ。」

「ステータス オープン」


***

名前:アミ


職業:しろねこ

レベル:1

装備:しろねこの着ぐるみ(猫神の加護付き)

適性:水・土・風・火・光・闇


体力:1000

知力:1000

素早さ:1000

魔力:1000

運:1000


スキル:[鑑定]


称号:異世界人、アイス屋さん

加護:猫神

***


 うひょ~。これはチートってやつ? かも? 魔法が使える~!

 職業が『しろねこ』だし、アイス屋さん認定されてるけど……。


 職業が『しろねこ』って、ここでは猫みたいに生きていけるってこと!? 念願のスローライフ!

 地球に未練はないよ、バンザーイ!


 あれ?

 自分の肩にかかっている髪の毛が白…い?

 いや、白髪みたいな白じゃなくて、白銀みたいなキラピカ! え?えええ?

 ビックリして湖に駆け寄り、自分の姿を映してみる。おお。髪の毛の色が変わってる。

 っていうか、あれ? なんかわたし、若返ってません?

 十五歳のときくらいになってるよ!?


「ちょっ!神様!!!若返ってるよー!!!!!」

「ああ、それは魔力が高くなったからな。魔力の高いものは、歳を取りづらいのじゃ」


 おおー肌にハリとツヤがある……。

 若さ、すごい。魔力、すごい。


「さてと、我はそろそろ、神界に帰るのじゃ。」

こっちをニコニコしながら、手を差し出している猫神様。


 加護のサービスしたから、アイスたくさんサービスしろってことね。無限に出てくるんだから、全種類あげちゃいましょうー!

 一番高い美味しいやつだけ2個つけちゃうぞ☆

 あ、でもそうしたら、ニャン吉が一番安いのあげてたのバレるね。

 まあいっか。結果的には、あの安いやつは無限になる前に食べられちゃったんだし。


 アイスを自前の空間に放り込んだ神様は、「にゃんにゃ~ん☆」と言いながら消えていった。あれ、呪文なのかな?


 さて……。

 太陽を浴びて気持ちよさそうにしているニャン吉……シロ?に、話を聞きますか~。



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