『にゃんジョン』でスローライフ!~白猫着ぐるみで最強にゃっ~

ねこ

第1話 猫になりたい!

「なにこれーーー!!!!!」

 お腹のポケットに入ったニャン吉が光り始めた!ニャン吉は、急いでテーブルの上のアイスを全部ポケットに詰め込んだ。

 そして、その瞬間…ピカッ!!とすごく大きな光に包まれたと思ったら、わたしは大きな木の下にいた。


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「あ~あ!ねこになりたいなー。」

 横にゴロゴロしている猫のお腹をもふもふしながら、コンビニごはんに、冷凍えだまめ、缶ビール。


 二十九歳あみの、いつもの金曜日の夜。(といってももう、時計の針は深夜十二時を超えている)

 お供は、もふもふの、「ニャン吉」だけ。

 東京で身を粉にしてOLとして働くあみは、もう限界だった。理不尽な上司に、仕事のできない後輩。面倒くさい同期に、終わらない仕事。

 平日は寝るために家に帰って、休日は溜まった家事と、食材の買い出し、睡眠で終わり。もちろん彼氏だっていない。

 仲が良かった友達は結婚して子持ちになり、なんだかもう向こうの世界の人、っていう感じで全く連絡をとってない。両親は、あみが社会人になってすぐに交通事故で他界。兄弟は無し。


「わたしには、ニャン吉しかいない…。金曜日に、猫と缶ビールなんて、もう干物女子決定だー。わたしだって『ていねいなくらし』とかしてみたいよ!コーヒー豆を挽いてハンドドリップで淹れて、ジャムを煮て、パンを焼いて!まずは転職かなー。」


 くううーと思いながら、枝豆を一粒、ニャン吉の口に突っ込む。

ニャン吉は、ある日突然わたしの家に住み始めた猫だ。ある日、帰ったら、家の床にニャン吉がデーンと転がっていたのだ。どこからか入ってきたのか。とりあえず可愛いし、癒やしになるので、それ以来、なんとなく世話をしている。ニャン吉は、枝豆とアイスクリームが好き。


 その晩、不思議な夢を見た。

 ニャン吉が喋ってる夢。

『アイスクリームは高級なやつがいいにゃ~あの濃厚さがたまらんにゃ~至福の味にゃ~』




 朝起きると、もうお昼の12時だった。

 ニャン吉は、いつの間にか散歩にでかけたみたい。とりあえず近くのチェーン系列のカフェで朝ごはんを食べて、スーパーへ向かう。変な夢を見たから、アイスを買おうと思ったのだ。

 「給料入ったし、アイスクリームを大人買いしてやるー!!!!!」


 家に帰ると、ちょうど宅配便のお兄さんが来ていた。

 深夜のネットショッピングでストレスを発散させていたわたしは、「なに頼んだっけ?」と記憶を探りつつ、受領印を押す。

 開けてみると、白猫の着ぐるみが入っていた。

 そうだ…数日前酔っ払ったあの日、確かに、この白猫の着ぐるみを買ったわ。フードにもふもふの猫耳がついていて、尻尾がてろんとついていて、お腹に大きなポケットがついている着ぐるみ。

「お腹のポケットにあなたの愛猫を入れよう!」という趣旨の着ぐるみで、「ニャン吉とカンガルー親子!!!!!」と興奮して、ポチッたのだ。


 改めて土曜日の昼下がりに、陽の光の下で見ると、29歳の干物女子が着ていいものではない気がしてくる…。けど買ってしまったものは、着てみるしかない!と思い、意を決して着てみた。うん。恥ずかしい。恥ずかしいぞー!!!

 でも、今日は土曜日。洗濯物を溜めすぎてしまい、何気に他に着るものがないので、そのまま洗濯と家事をした。


 家に帰ってきたニャン吉は、わたしの姿を見て、目をまん丸くしていた。瞳孔めっちゃ開いてた。

 そんなニャン吉を抱きかかえ、念願のポケットに入れてみる。何気に高い買い物だっただけあって、作りがしっかりしていて、重いニャン吉を入れてもきちんとホールド力がある!


 ニャン吉を入れたまま、冷凍庫から大人買いしたアイスクリームをテーブルに出し、

「ニャン吉はどれ食べる~?」と聞いてみると、ぽふっと前脚を、いちばん高いアイスの上に置いた。

 ニャン吉、お前…高いやつが分かるのか!? と呆然としていると、ポケットのニャン吉が光り始めた。


「なにこれーーー!!!!!」

 ニャン吉は、急いでテーブルの上のアイスを全部ポケットに詰め込んだ。

 そして、その瞬間…ピカッ!!とすごく大きな光に包まれたと思ったら、わたしは大きな木の下にいた。

 白猫着ぐるみのまま、ね。


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