第37話 空港
「ごきげんよう。土岐美里亜先輩。今日の便で出立されると伺いましたので、お待ちしておりました。」
空港の廊下で、土岐美里亜と彼女の『守役』達に、話しかける生徒会長。
この時、半開きにした扇を、閉ざす音が響いた。但し、以前使っていた物とは、形こそ類似しているが、色合いは異なる。そして、螺夢が、生徒会長に応える。
「なんの御用でしょう。姉小路エリーゼ。」
「要件は、2つ。1つは、お見送りです。」
土岐美里亜が、扇の先端を下げた事で、双子が揃って礼を述べた。
「そうですか、わざわざありがとうございます。」
「どういたしまして。で、2つ目の用件です。こちらをお届けに来ました。」
そう言いつつ、紙製の手提げ袋から取り出した紙袋を、差し出す生徒会長。
「……これは……」
紙袋から中身を取り出した螺夢は、『それ』を恭しく女主人に差し出す。女主人は、今手にした扇を麗夢に預け、『それ』を受け取る。麗夢は、預かったものを、さりげなくしまう。
この時、一度半開きにした扇を、閉ざす音が響いた。今度こそ、以前使っていた扇だった。
「感謝。」
双子が、驚愕の表情で、女主人を見るのも無理からぬ事だった。そう言ったのは土岐美里亜だったからだろう。そして、更に驚愕する。
「姉小路エリーゼ、また逢う日を、愉しみしています。ごきげんよう。」
そう言い押して、旅立つ土岐美里亜。双子は、3人分の荷物を手に慌ててついて行く。
「ありがとうございます。失礼いたします。」
途中、双子は、振り返ると、深々と一礼し、また女主人について行く。
「ごきげんよう、土岐美里亜先輩。」
独り言の様な、意思疎通だった。
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