第36話 報告会~前編
「これは、コピーですが、署名捺印済みの『誓約書』です。念の為、あの会話の全てを、斉藤家の皆さんから、許可をとって録音しておきました。お聞きになりますか。」
黒田弁護士が、取り出したのは、クリアファイルに収められた例の『誓約書』のコピーだった。ちなみに、ここは探偵事務所だ。
「十分ですよ。それには、及びません。ご苦労様です。黒田先生、多賀君。」
「俺も、要らないぜ。結果が、こんなにヴァッチリ決まってんだ。」
「では、私はこれで、失礼いたします。」
3人と挨拶を済ませると、用は澄んだとばかりに、帰る黒田弁護士。
「大体、何で『黒田』なんだ。『竹中』じゃないのか?」
などと言う無意味な指摘をする者などこの世界にいない。
「ちなみに、『竹中』は、『土岐家の顧問弁護士』です。が、今回の一連の騒動を『有利』にまとめる事が、できなかったとして、『契約解除』されています。」
などと言う無意味な指摘に事実を被せる者などこの世界にいない。
「生徒会長、時に……。」
「多賀君、言いたい事は、分りますよ。副会長は、自主退学しました。学校側も即刻受理しましたので、正式に『元』副会長です。そこで、提案ですが……」
「だが断る。」
宗竜の「生徒会長、お断りします。」は、「だが断る。」と聞こえた様な気がしたが、きっと気のせいだろう。
某狂漫画家とも無関係に相違ない。
「まだ何も言ってませんよ。多賀君。」
「生徒会長、そんなもの、『予知能力』などなくとも分かります。僕が次の副会長に、なれと言うのでしょう。だから、お断りします。」
「何故です? 多賀君。」
「生徒会長、僕には荷が重すぎます。僕には、『室長』で十分です。」
「強情ですねぇ……。」
「ま、いいじゃねぇか。エリー嬢ちゃんの『問題』も解決したんだしよ。副会長なんて雑用係は、やりたい奴にやらせりゃ、いいんじゃねぇの。」
結局、ため息をつく生徒会長だった。
「………………仕方ありません。副会長の人選は、私が何とかします。」
「しかし、まだ嫌な予感がします。僕は、斉藤敏正が、蝮か何か毒蛇の如き男に見えました。」
ここで、所長へと視線を送る宗竜。
「おう、ヴァッチリ任しとけ。定期的に、奴さんを監視しとくからよ。それに、斉藤家が、契約してる警備保障会社は、セキュリティがザルなんだよ。問題なしだ。」
「考え過ぎでしょう。私には、彼が『悪だくみ』をする『未来』など視えませんでしたよ。」
「あくまで、念の為です。時に、生徒会長、『あれ』を返す為に、空港で会ったそうですね。その時の様子を、まだ聞いてませんでした。」
「あら、そうでした。お話ししますね。」
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