第34話 『能力』の『謎解き』~後編

「! うぅぅぐぅっ! ! !」

 ややあって、手を離す信綱。

「…………これ……頭ん中に、直接情報を送り込むのかよ……結構、きついな……ぁって、どう言う事だよ、これ!?」

「実は、私も同じ疑問を抱いていますわ。叔父様。」

「どーゆー事っす?」

「直子さん、いいですか、『悪霊』を『認識』『接触』『攻撃』が可能なのは、『能力者』本人のみです。僕達には、できないのです。」

「え……ええええっーーーーーっす!?」

「だから、お前さんの口から聞かせて欲しいんだ。どう言う事なのかってな。」

「そうですね、これでようやく、本題に入れます。」

「おい! 今までのが、前振りだったとでも言いたいのかよぉっ!」

 などと言う無意味な指摘をする者などこの世界にいない。

「まず、僕は、『能力者』です。そして、今から僕の『能力』を披露します。」

「は? ……。」

 呆気にとられる3人を尻目に、『悪霊』を鷲掴みにした右手に力を込める宗竜。

『GYEEEYAHHHHHHHHHH! ! ! ! 』

 『悪霊』は、雲散霧消した。

「? はいぃぃ……?」

「これが、僕の『能力』です。」

「それじゃ、まるで超スピードとか、催眠術だとか、そんなチャチなもんじゃねぇって言う事かい。」

 などと言う無意味な指摘をする者などこの世界にいない。

「僕の『能力』は、『他者の能力を打ち消す事』です。」

「その幻想を、プッチ壊す!」

 などと言う無意味な指摘をする者などこの世界にいない。

「しかし、『打ち消す能力』とは、自分自身を『打ち消さない』と言う、『究極』に『自分に甘く他人に厳しい能力』ですな。」

 などと言う無意味な指摘をする者などこの世界にいない。

「多賀君、つまり、『悪霊』が持つ『認識』『接触』『攻撃』が可能なのは、『能力者』本人のみ、と言う『能力』を打ち消していた訳ですか。」

 ようやく、我に返る生徒会長だった。

「するってぇと、『鷲掴みにしてた事』も、『視えてた事』も、『触っただけで情報が伝わった事』も、全て説明がつくって事か……。ん!? それってまさか……。」

「恐らくそうですわ、叔父様。」

「なんの話っす?」

「こう言う事は、お前が、説明しろ。」

 そう言う瞳で、見られる宗竜だった。

「では、生徒会長。『予知』によれば、僕と交際した場合、『死の未来』が、視えなかった。そう言ってました。」

「そうですよ。多賀君。」

「違う! それは間違っている!」

 宗竜の「違います。正確には、『何も視えなかった』です。」は、「違う! それは間違っている!」と聞こえた様な気がしたが、きっと気のせいだろう。

 某コードな強制命令とも無関係に相違ない。

「確かに、そうです。モニタの電源を落としたかの様に、真っ暗でした。」

「それは、僕の『能力』で、生徒会長の『能力』が、『打ち消されていた』からです。」

「だが、多賀よぉ……何故だい。」

「おひおひ……この期に及んで、駄洒落かよ。」

 などと言う無意味な指摘をする者などこの世界にいない。

「ここまでは、本題の前提です。これから、本編に入ります。」

「前置き、長過ぎっす。」

「まず、勘違いを正しておきます。恐らく、僕は、『生まれついての能力者』です。

が、この『力』を『故意』に『使った』事はありませんでした。…………昨日までは。」

「は? なんでそうなるっす。『能力者』なのに、自分の『能力』を自分で、使えないって、おかしいっす。」

「三木先輩、それは当たり前ですよ。僕の『能力』は、『打ち消し』。つまり、側で誰かが、『能力』を使って、それが『不発』に終わらない限り、その存在を認識できません。」

「そうですね。『ビーナス・ビーズ』による『能力攻撃』を、直接その身に受けた事で、『覚醒』できた。そして、今は『自在に』使いこなしている。そう言う訳ですね。多賀君。」

「生徒会長、正解です。恐らくですが、僕の『能力』は、『微弱に放出』されていたと考えられます。ですから、生徒会長の『能力』も、『悪霊』の『能力』も不調だったのでしょう。」

「おかげで、エリー嬢ちゃんも延命できたし、しかも、一向に『事故死』しない嬢ちゃんの様子に業を煮やした奴が、直接出張ってくれたって訳だ。」

「でうから、返り討ちにできました。めでたしめでたし、ですね。」

「ですが、折角『能力』が、手に入ったのです。名前をつけましょう。…………………………そうだ……『センスレス・シングス』(無用の長物)と言う所かな。」

 等と言う無駄口を叩かない宗竜だった。

「そうだ、折角だし、多賀の『能力』に名前を付けてやるってのは、どうだ。」

「素晴らしい意見だと思います。伸綱叔父様。」

「はーい、そんじゃ、『シュレッダー』なんてどうっす。」

「やめて下さい。僕の『能力』は、所詮、『能力者』が、側にいなければ、何の役にも立たない『無用の長物』。無意味な格好つけは、やめて下さい。」

「そう言うけど、お前さんの『思い入れ』が、強くなる。より、『完全』に『安全』に『万全』に、『能力』を使えるってもんだ。」

「……『無用の長物』……。」

「おっ、エリー嬢ちゃん。何か、いいもん思いついたかい。」

「あらゆる『能力』を、『無用の長物』とする『能力』……。」

「やめて下さい。生徒会長。」

「無意味……『センスレス』……物……『シングス』……『センスレス・シングス』!」

「何だ! その偶然を装ったこじつけは!」

 などと言う無意味な指摘をする者などこの世界にいない。

「『センスレス・シングス』……『無意味な物』……『無用の長物』か、いいんじゃねぇ。いやむしろ、ヴァッチリだな。」

「エリーの意見に反対する訳ないっす。」

「決まりですね、多賀君。あなたの『能力』は、『センスレス・シングス』! ですよ。」

「生徒会長……………………………………………………………………………………………………そこまで言うなら、それで。ですが、念の為、THの発音に気を付けるぐらいですか。」

「おっ、中々理解が早いねぇ。」

「恐れ入ります。」

「犯人の面も既に拝んだし、真相も分かった。じゃ、そろそろ『解決』させてくんな。」

「はい。では、生徒会長、振り返って下さい。」

「お願いします。多賀君。……そうそう、『能力』を使う時は、必ず名前を呼びなさい。」

 振り返り、多賀に背後を見せる生徒会長。

「生徒会長…………………………………………分かりました。『センスレス・シングス』。」

 この後、生徒会長の背後にいた『悪霊』を左手で握りつぶし、『打ち消した』宗竜だった。


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