第20話 学校を休んでもらいましょう。……1年ほど……。

「……っと、ストップ。」

 骨太の人差し指が、マウスをクリックし、再生動画を止めた。

「……確かに……『予知』した通りです。が、事実を見せつけられるのは、違いますね。」

「時に、俺からも1つ聞いていいか。」

「答えられる質問なら、どうぞ。」

「何故、こいつらに黒幕がいるって、分かった?」

 例の三羽烏が、下諏訪をイジメている画像を指さしていた。

「そうですね。強いて、言語化するならば…………………………………………風格です。」

「風格?」

「人は、3人以上で群れると、リーダーができる可能性があります。これは、人数が増えるに比例し確率が上昇します。ですが、リーダーとしての風格を備えた者が、いませんでした。」

「だが、イジメグループが、必ず統率された組織とは、限らないだろう。むしろ、烏合の衆のケースだって、多いんじゃないか。」

「確かに、三羽烏は、文字通り烏合の衆です。しかし、それでは1つ腑に落ちない事が、ありました。」

「ほぉ……。」

「5W1HのWhy……『何故』連中が、下諏訪先輩を、イジメているのか? その動機です。」

「そりゃ、単に『ムカつく』からだろう。相手は、学年2位の成績上位者なんだろう。」

「『ムカつく』という言葉は、嫌いだ。誰が使っても僕は、使わない。」

 等と言う無駄口を叩かない宗竜だった。

「違います。僕は、その様な事は言ってません。『もっとイジメ易い弱者を狙わない理由』……それこそが、僕の疑問です。」

「……!? そうか!」

「どう言う事です? 多賀君。」

「生徒会長、もしあなたが連中からイジメられたら、どうします。但し、『能力』を使ってはいけません。」

「スマホで、会話を録音して、教師に訴えます。」

「生徒会長、僕はこう思います。『生徒会長が嘘をつく訳ない。証拠が無くとも教師は信じる。』」

「そうかもしれません。」

「生徒会長、それは、『肩書』があればこそです。その様な物を持たない一般の生徒は、証拠が必要になります。」

「そう思います。」

「生徒会長、更に、付け加えるなら、反撃する力の無い……乏しい者を、イジメれば、反撃の危険性を減らしてくれます。」

「ですが、下諏訪先輩は、成績上位者で優等生、教師の覚えも目出度い……そ、そう言う事ですか!?」

「はい。下諏訪先輩の言う事なら、生徒会長同様、親身になって耳を傾ける事でしょう。故に、『Why』です。が、他に『黒幕』が存在し、そいつに命令されていたならどうでしょう。」

「そんなら、確かに辻褄が合う。そうそう、ついでに担任教師の話でも、しとこうか。」

「ああ、既婚者の癖に、学園内の男子生徒との肉体関係……不倫を愉しんでいる。しかも、それが黒幕にばれて、『脅迫』されている。と言うあれ、ですよね。」

「伸綱叔父様、調査結果は?」

「はぁーい、黒確定。1日分だけど、証拠ヴァッチリよ。」

 封筒から、写真を「バサッ」と取り出された。

「……何と言う事……イジメの次は、プリン! この学校には、クズしかいないのぉーっ!」

 どうやら、生徒会長は、糖分欠乏らしい。

「生徒会長、声が大き過ぎます。お静かに。後、1つ。……僕も同感です。」

 更に、今回のイジメグループ、担任教師、被害者の個人情報などを基に今後の方針を決める。

「僕に考えがあります。」

「聞かせて下さい。多賀君。」

「下諏訪先輩に、学校を休んでもらいましょう。……1年ほど……。」


 * * * 


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