第14話 警察にて~前編

「おや、先輩。どうしました。」

「どうもこうもねぇや。今日、任意でしょっぴいたガキ、何にも言わねぇんだ。」

「えぇーっ……ひょっとして、あれじゃないんですか? 弁護士の入れ知恵とか。」

「はぁ? どう見てもタダの高校生だよ。それに、弁護士って奴は、イケ好かねぇなぁ。こっちの仕事に、ケチばっかつけやがってよぉ~。」

「ははっ、そりゃ……弁護士の……仕事……。」

「けっ、二言目には、『権利』『権利』。被害者の身にもなれっつうんだ。あいつら、『権利』で、メシ食ってんんんんのかよぉ~。」

「せ……先輩……。」

「ん? どうした。」

「先輩……後ろ……。」

「後ろ……ってぇっ!」

 びっくりして飛び退く私服警官。そこには、胸に弁護士資格を有する事を示すバッジを付けた初老の男が、立っていた。

「失礼、弁護士の黒田と申します。私の依頼人、松平元泰様に接見したいのですが、どちらに行けば宜しいのですか。」

「……では、こちらに……。」

 若い方の私服警官が、道案内を買って出る。

「お世話になります。」

 案内についていく弁護士黒田。

「そうそう、『権利で、メシ食ってる』は、名誉棄損にはなりませんが、マスコミ受けする話ですな。」

 などと言う言葉を、置き土産に立ち去った。

「やっぱ、イケ好かねぇや。」


 * * * 


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