第2章

第7話 イジメ~松平

「おせぇーぞ! パンかうだけで、またせやがって!」

 出っ歯で、のっぽの2年生が、息も絶え絶えな状態の、眼鏡の2年生男子から、紙袋を引っ手繰った。紙袋から、目当てのパンを取り出すと、取り巻き共にも渡す。

 それらを尻目に、パンを買って走って来た眼鏡は、立ち上がって、その場を立ち去ろうする。だが……

「おい! なに、にげてんだよ!? おさえつけろ!」

 取り巻き共に、押さえ付けられる眼鏡。

「ったく、こっちはぁ、メシのとちゅうだっての。カッテにかえんじゃねぇ!」

 両腕、両肩を押さえ付けられた眼鏡の腹部に、蹴りを入れる出っ歯だった。眼鏡の胃が空だった為、大惨事にはならなかった。

「おい! 人をパシリ扱いして礼も言わず、金も払わず、それかよ!」

 等と言う無視される事受け合いの指摘をする者など、この場にいない。

「……。」

 蹴られた箇所を両手で押さえ、うずくまる眼鏡。

「おっ! そーだ。イイことおもいついちっぃぃ~った♪」

「へぇー……ナンす?」

「いーから、いーから、メシくっちまえよ。」

 こうして、痛む空っぽの胃袋を抱えたまま、何も食べる事が出来ない眼鏡を尻目に、ランチを済ませた出っ歯と、取り巻き共だった。

「よぉ~~~、おめぇ、おれらのナンだ。」

「……。」

「ああぁっ~。きこえねぇ~なぁ~。」

「……。」

「ダチだろぉ~、ダチ。だからよぉ~キョーリョクしろよぉっ!」

「……。」

「さぁて! はらごなしの、うんどーだぁ!」

 うずくまる眼鏡を蹴った。

「おいおい、ボール。ころがれよ。サッカーになんねぇだろ!」

 当初、ぽかんとしていた取り巻き共も、ようやく意味を悟った。

「!? そっか! よし、オレも!」

 蹴る奴が、1人、また1人と増えていく。残念ながら、サッカーには、ならなかった。

「ボールは、トモダチ! さっさと、ころがれよ!」

「おい! お前らは、友達を蹴るのかよ!」

 等と言う無視される事受け合いの指摘をする者など、この場にいない。

「……。」

 頭部を両手で押さえ、うずくまる眼鏡。

「おらぁっ! ころがれ! ゴールにならねぇぞ!」

 出っ歯の蹴りが、入った。。

「どうした!」

 取り巻きの蹴り。

「おもすぎて。ころがらねぇ!」

「ちげぇねぇ!」

 出っ歯は、取り巻き共と笑った。品性を感じさせない笑いだった。

 そうこうする内に、予鈴が鳴った。

「おっと、ヤベ。」

「ジカンが、たつのはえーな。」

「オマエもさっさと、キョーシツに、もどれよ。」

 連中は、品性を感じさせない笑い声を吐きながら、屋上から校舎内へと戻る。


 * * * 


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