第28話 ここからが正念場
あの後、蘇我島さんは追ってこなかった。
同時に霧原先輩も戻ってきてない。
どっちも無事でいてほしい。
虫の良すぎる話というのはわかってるんだけど、僕にとっては2人とも恩人だから。
それと、あの時の蘇我島さんの言ってた事が気になる。
小葉さんって人は僕に惚れてるって言ってた。
語弊があるって言ってたから、多分好き嫌いとかじゃなくて、僕の何かを見て、それが小葉さんに総会を作らせるような事だったって事だよね。
………心当たりが一つもない。
心当たりがない上に小葉さんって人にもあった記憶がない。
ここから導かれる可能性は二つ。
・小葉さんはストーカー。常に僕のことを見ていて僕が言った事を何故か自分に言われたと思い込んで、その超常的な理解力で暴走したタイプ。
・僕の事をどこかで見てアイディアが溢れかえり、そのクリエイター精神と常人を超えた行動力が、本来あり得ない事を実現してしまう後世に名を残しそうな天才タイプ。
会って大丈夫な人かな……。
「ティファニーちゃん」
明日葉さんだ。
「大丈夫?」
なにが起きるかわからないけど正直家帰りたいくらいの心配しかないので多分大丈夫だと思う。
「大丈夫です」
「……ごめんね巻き込んじゃって」
後ろめたいのか、こっちに来てからすごく気を使われてるのはわかる。
「でも、これは絶対に必要だからさ。絶対にティファニーちゃんを守るし、絶対嫌な思いなんてさせない。だから、一日だけ。……一日だけでいいから付き合って欲しいな」
あ、可愛い……。
初対面の明るさからのギャップがすごい。僕はギャップ萌えするタイプだったのか……。
「大丈夫です。僕にできる事なら……ないと思いますけど。良い方に行けるなら僕も手伝います。明日葉さん達には服を買ってもらったり、自信をつけてもらったりしたので」
フラれたりもしたけど。
「かーわいいなぁ。ありがとね。その服似合ってるよ。また買いに行こうね」
撫でないでほしい……。
蘇我島さんは一晩だったし、ちょっと家に帰る時間伸びちゃうな。
お母さん心配してるかな。
「……それで、これからどうするんですか?」
「計画通りだから、これから総長代理と交渉する。でもティファニーちゃんを手に入れるためにちょっと人員を割きすぎたし、アタシだけで交渉なんてできないから、他の部会に頼る事にしてる」
それは大丈夫なんだろうか……?
「ティファニーちゃんを怪我させないための人達に頼るだけだから協力してくれるのは確実確実!それ以外はアタシが泉の代わりにガンバっちゃうから!……しばらくしたら泉だって戻ってくるし、副長らしいとこ見せなきゃね」
何もできないな。こんなに明日葉さん達は頑張ってるのに、僕には出来ることが何もなくて、何をしていいのかもわからない。
でもきっと今だけだ。できることが出てくる。それまでは、僕はじっと我慢しておこう。
「じゃー電話するからさ。聞いてみる?」
「いいんですか?」
結構大事な相手なのでは?
「うん。総長代理の声、聞いてみたいでしょ?」
それはそうだ。聞いてみたい。声でわかるならそれに越したことはないんだから。
「まぁその前に下準備だけさせてねー……。もしもし
猪狩司令?誰だろう。盗み聞きなんて良くないのはわかってるんだけど……横にいるとつい聞いてしまう。
「具体的にはー、交渉したいから、その手伝いなんだけど、他の部会が出てこないようにして欲しい、です。出来る?」
他の部会を牽制できるような人たちってこと?すごい人たちなんだなぁ。
「助かる助かる!じゃあよろしくね。……そっちの計画とは関係ない?大丈夫そ?」
別の計画で動いてる人たちなのかー。すごいなー……。矢部総会の中身が気になってくる電話だと思う。
「相変わらず分かんないね。でも助かります!じゃ、よろしくお願いしまーす」
電話を切る明日葉さん。
「これで下準備はヨシ!ちょっとどきどきしてきちゃったな」
「応援してます……!がんばって!」
「うん」
そしてコール音が鳴る。
3コールほどして……。
「こちら総長代理」
深夜なのに眠さもない冷たい声がした。
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