第23話 いや、そんな!あの足音はなんだ!奥に!奥に!
放課後。
「早く帰ろうぜー!ゲーム!ゲームが待ってるぞ矢部ーー!」
「やりたいのはお前だろ……。ん?」
榊原からしか連絡のこないスマホにメッセージが……。
「ボクも楽しみだなー。何するの?」
これは……
「今回やるのはマイ◯ドクラフトだー!人気でな!キャラクターの人格を好きなように作ったり壊したりできるんだ!」
「冒涜的すぎない!?どしたの矢部さん」
…………。
「ごめん用事ができた。二人とも先帰ってて」
「どうした?俺もついていくか?」
「大丈夫だよ。ちょっと呼ばれただけだから」
「そうか……」
しょんぼりするな。
「ついてくるなよ」
「……チィ!じゃあ後でな!」
舌打ちするな。
「着替えて矢部さんの家に集まればちょうどいいかもね」
「だな!じゃあ家帰るか!!ってゲーム持ってきた意味がないやないかーーい!」
元から持ってくるな。
「まぁそれは自業自得だよ……」
「くぅん」
むさ苦しい子犬やめろ……。
二人と別れて僕はまた屋上に向かった。この時間。
あれ、この時間ってなんか……。
そう気づいたのは4階にたどり着いた時だった。
「……早く行こ」
この前の七不思議なんて気にしてない……。
そもそもこんな時間に生徒がこの階にいるなんてありえない……。
ペタッ……。ペタッ……。
「…………」
なんか変な音がした。
ペタペタって。……裸足でなんかが歩き回ってる音がする!
僕は階段をのぼる。音がしないように。上にはあの人がいるから、多分下に行くよりは安全……!
「わっ!」
間抜けな声が出たのは自覚してる。
そして間抜けにもこけた。気が散って段差を踏み間違えた。
当然、音が響く。まずい。
ペタペタする足音が明らかにこちらに近づいてくる。
立ち上がれはしたけどスネを段差に打ち付けたので痛いのとすくんで走れない。
ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ。
あ、死ぬ。多分怪物に食われて死ぬ……!!
「矢部様!!」
その時、階段上からふんわりと花のように布が広がって誰かが飛び降りてきた。
いや、誰かはわかる。
「先輩!!」
「…………見ましたか?」
着地した先輩がスカートを払う。
「ミテマセン」
黒のスパッツ……。
「そうですか。残念です。この四階にはまさしく怪物中の怪物がいるのですが……」
そっちの話?スカートの中の話じゃなくて?いや、突っ込まないけど。
「この時間からはあの怪物の時間なのを忘れていました。危険に晒してしまい申し訳ありません」
霧原さんが真顔で言うせいで冗談に聞こえない。
「とにかく上に移動しましょう。どうやら今は襲ってくるつもりはなさそうです」
「怪物の正体しってるんてすか!?逃げた方がいいと思うんですけど!」
「落ち着いてください。生徒がいなくなるまでは待機した方が賢明です」
「生徒がいなくなるまで……?」
「あの怪物には近づかせません。信じてください」
先輩が両手で僕の手を包んで、凛とした目で見つめてくる。
「分かりました……」
先輩に従って5階、つまり屋上へ上がると、前回と違って何故か屋上に繋がる扉の鍵が開いていた。
先輩が扉を引いて開ける。
「どうぞ」
僕が開けるのがレディファースト的な……。紳士的行動な気がするんだけど……。
ドアを通ると明石さんと、明日葉さんが見えた。
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