第6話 男が男のパンツについて語ってるだけなので合法
「あ、えーと……部屋、間違えちゃ……った……」
そこには僕のパンツをまじまじと見てる山条くんがいた。
部屋は間違えてもパンツは見ないだろ。
「とりあえず……パンツかえして」
恥ずかしい。
「あ、そうだね……。はい。その……ごめんなさい。あのボクもう近づかないから」
ちょっと泣きそうになってる山条くんに僕はなんで言えばいいのかわからなかった。
別に男にパンツ見られたくらいで、もはや何も気にならない。何故かは分からないけど、多分榊原のせい。
「榊原も同じようなことしてるから大丈夫だよ」
「榊原くんも……?」
「うん。だから、そんな……。気にはして欲しいけど。大丈夫だから」
特に榊原
「はい」
「でも、山条くんなら理由があるんじゃないの?パンツで喜ぶ変態には見えないし」
「いや、トイレがわからないから、部屋を開けたら偶然見つけちゃって……。ちょっとタンスから見えたから……。本物かなって、それで……」
理由聞いたけど榊原だったら「嗅ぎたかったんだもん!」くらい簡潔なのにな……。
というかパンツがタンスから出てたことのほうが恥ずかしい。
「まぁその……気にしなくていいよ、初犯だし、男同士だし」
「え、男?」
「うん。男」
しばらく考え込む山条くん。
「その見た目で……?」
「うん」
男か女かわからないくらいやばい顔だった記憶はないんだけど。目立たない顔の自覚はあるけど。
おもむろに僕の手を掴む山条くん。そのまま胸に持っていく。やわらかい。……やわらかい。なんで?
「嘘つかなくてもいいよ。ボクも同じだから」
嘘ついてないし何が同じなのか。
うんとも言えずにいると山条くんはぎゅっと僕の手を握った。
「とりあえず矢部さん。ボクの前では男って言わなくていいから」
男だよ。
「パンツ見たのはごめんね……でも、そこまでこだわってるのはすごいよ」
パンツを履く事にこだわった記憶はない。山条くんの家でパンツを履くのはこだわりなのかな。
ノーパン派なんだろうか。
「ボクは女物のままだからさ」
え、何そのカミングアウト。
「罪滅ぼしってわけじゃないけど、パンツも見ちゃったし、男物だったけど」
女物を履く趣味はないからね。
「矢部さんが女の子だって事、みんなには絶対言わないし、バレそうなら僕がフォローするよ」
勝手に進行してるけど僕は男だ。
バレても男だよ。
「どうして隠してるのかはあえて聞かないでおくね。それじゃ、また学校でね」
何も隠してないけど、何かすごい勢いで勘違いしてるんだけど。
同じ方法でわからせる。山条くんの手を掴んで僕の胸を触らせる。
「あ……」
僕は頷く。筋肉はないけど女の子の胸でないことは分かるはず。
山条くん沈黙。さすがにここまでしてわからなかったら、もう証明のしようがないというか、最終手段の証明を転校初日の人間にやるくらいならもう女でいい
「自慢したつもりはないんだけど……その、ごめんね」
謝られた。男よりもないんだショック、みたいなこと思ってないから。
「だから、違くて。僕は男なの!」
「その顔で!?」
疑いすぎじゃない?そんな綺麗な顔してた記憶はないし、朝とか顔がヤクザみたいになってるよ。
「自覚ないの……?」
「自覚っていうか……男だし……」
「もしかして男として育てられてるのかな……」
ぼそっと人の性別を全否定するな。
ちゃんとある。……ちゃんとある。
「ちゃんとあの……あれもついてるから……」
「あ、うん……」
胸を見るな。そっちじゃないよ。
「ちゃんとち○○んあるから!!」
恥ずかしいことを言わせるな。
「あ、えー‥‥本当に?」
そんなに信用ならないのか。
一体どうすれば……?
パンツを下ろせばいいのか?
「と、とりあえず今日は遅いし、帰るね。その、本当にごめんね……」
何か……。はっ!!
「触ればわかる!」
「落ち着いて!?」
落ち着いてますけど??
「ごめんね!矢部さんは男の子なんだよね?分かった。ボク信じるよ。だから血迷わないで、ね?」
まぁそうまで言うなら……。
「じゃあ、またね」
玄関で手を振って山条くんを見送る。なんか、意味がわからなかった。確かに触らせるは同性でもやばいか……。ちょっと混乱しすぎたな。反省しなきゃ。
──────
矢部さんの玄関を出たボクは罪悪感を持ったまま帰途に着いた。
電話が鳴る。
「もしもし。あ、おと……組長。はい。ちゃんとやれました。計画通りです。でもちょっとイレギュラーがあって……はい。矢部総一郎は、女です。はい。本人はわかってないみたいです。……いえ、実際に確認までは……はい。残りは家で、はい」
ボクは電話を切るとため息をついた。
「矢部さん……なんで男として育てられてるんだろ。あんな可愛いのに……」
─────
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