紅の鑑定士!
「そうそう、<太刀・雷切>の鑑定依頼との事だったけど……少し興味深い話を聞きましてね。この娘、五鈴の家に伝わる家宝の太刀もまた<太刀・雷切>との事でして……」
「それは……また身の程知らずにも程がありますな」
「んにゃ!?」
菅野の言葉にモミジが声を上げた。
「よもやそんな薄汚い娘の言葉を信じるのですか? 何も持たぬ平民風情が、『浪漫財』を所持? 妄想もそこまでいきますと、哀れですね」
予想通りの反応だな。しかし、いつまで笑っていられるか。
「私が所有している<太刀・雷切>は我が菅野家が総力を上げて探し出した大変貴重な古刀です。当然、鑑定士殿もどちらを信じるかなど……」
「どちらを信じるか? そんなの……刀剣に決まっているでしょ」
私はそこで一度言葉を切ると、ずっと肩に担いでいた五鈴の太刀を前に突き出す。急に刃物を突きつけたせいで、後ろに控えていた男達が拳銃を取り出した。
「貴様……!」
控えの男が銃口をこちらに向けながら叫んだ。
「お下がりなさい!」
銃口の先に、モミジが両手を広げて立った。胸元が、思いっきり揺れた。
「お姉様は、認定鑑定士。鑑定するためにここに来ました。鑑定の邪魔はさせません」
「そういう事。分かったら、銃を下ろして」
私が先に進めようとすると、菅野が胡散臭い笑顔を浮かべて問う。
「ほう? 鑑定士殿は、何を仰りたいのですかな」
分かっているくせに聞くな、と心の中で毒を吐きながら私は告げる。
「二振りの太刀を同時に鑑定する。それで白黒つけましょう」
「何を偉そうに……!」
私の言葉が気に入らなかったのか、控えの男が拳銃を握る手に力を込めた。
「偉そう? 何度も言わせないで。私は、認定鑑定士が一人、紅の鑑定士!」
見せつけるように羽織を翻すと、華族達が息を呑んだ。何故か若い娘達からは黄色い悲鳴が飛び交ったが。
挑発的な言葉に意外にものってきた男は、この場で引き金を引きそうな勢いだった。それに勘づいた菅野は「下がれ」と一言で男を諫める。
「確かに鑑定士殿の言う通り、ちょうど良いかもしれん。また変ないちゃもんをつけられたら敵わん。そこの小娘の太刀も一緒に鑑定してもらおうじゃないか。どっちが本物か、嘘つきか、白黒つけようじゃないか!」
「交渉成立ね。では、鑑定を始めましょうか」
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