~28~ 不穏な足音
『リュカ』
午後の会議に参加していたフランクは、出席するはずのエクトルがいなかったことに疑問を感じ、会議終わりに同期であるリュカに声を掛けた。
『エクトルはどうした?』
『あぁ……朝、お身内が倒れられたって連絡がきて、病院に行くために今日は有休をとってるよ』
『身内? ご両親か?』
『う~ん、相当動揺していたからご両親かもしれないが……あ、そう言えば、電話はサラというハウスキーパーからだったらしい』
『サラ……』
ということは、羽琉さんか?
瞬時に察したフランクの表情も険しくなる。
『病院はどこか聞いてるか?』
『いや。さすがに、そこまで突っ込んでは聞けなかった。その後はスケジュールの変更でバタバタしていたし……』
『そうか。ありがとう』
早めに会話を切り上げリュカと別れたフランクは、自分の部署に戻りながら友莉に電話をした。
十中八九、倒れたのは羽琉だ。
【こんな時間に珍しいわね。どうしたの?】
友莉も仕事中だったため、長めのコール音で通話が繋がった。
「仕事中に悪い。友莉。今すぐサラさんと連絡が取れるか?」
【サラに? 何かあったの?】
フランクは事の次第を説明し、プライベートでサラと交流がある友莉に連絡をとってもらうことにした。
一旦通話を切ってからしばらくして、【サラと連絡が取れた】と友莉から電話が掛かってくる。
【病院はシルヴィ・ホスピタルだったわ。病室の番号も聞いたから、もう少ししたら向かってみる。フランクはどうする?】
「……あと一件、抜けられない企画プレゼンがあるから、それが終わり次第俺も向かう」
【分かった。着いたら連絡して】
「分かった」
羽琉の容態も気になるが、エクトルの精神状態も気になる。
友莉との通話を終えたフランクはもやもやとした気持ちを抱えつつ、自分のデスクからプレゼンの企画書とUSBを持ち出すと次の会議室に移動した。
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