~27~ 欲の自制
私が何かしてしまったんだろうか……。
苦痛表情の羽琉を見つめながらエクトルは自分を責めていた。
こんなにも羽琉が苦しんでいることに気付かなかった。
だがエクトルが入浴していた短時間で、どんな原因があって羽琉に異変が起きたかは本当に分からない。どう考えても分からないのだ。
ただ――。
羽琉との関係が進展してから、羽琉に触れたい衝動が抑えられなくなっていることは自分でも自覚していた。
羽琉からも拒否反応がなかった……と思うので、エクトルは好きなだけ羽琉とのスキンシップを深めていったのだが、その自分の行動が羽琉の過去に触れてしまったのなら……そしてまた凄惨な過去の出来事を思い出させてしまったのなら、ビズを拒絶した羽琉の行動も肯ける。
「羽琉を怯えさせるなら……こんなに苦しめてしまうなら、私は自分の欲を自制します」
だから……だから羽琉。
「どうか、私から離れていかないで下さい」
エクトルも泣きそうに顔を歪める。
眠っている羽琉の手を握ることすらできないまま、エクトルはベッド横に立ち尽くしていた。
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