さ夜
さよ、と読みます。サヨルではありません。意味するところは単純に「夜」なのですが、この「さ」という接頭辞には神聖さを示す働きがあります。ですので、古代人にとって夜はただ暗い時間ではなかったことがここからわかります。ちなみに朝や昼、夕などには「さ」はつきません。
ではなぜ、夜が特別視されていたか。それは、夜は「人ならざる者の時空間」ととらえられていたからです。古代では、夕方から夜になるにつれてソトの空間は異界につながると信じられており、そこから神や
〈ファンタジーにどう使うか〉
このような大和的な夜の設定を導入すると、あなたの和風世界がさらに充実すること間違いなしでしょう。ただ、それによる弊害も起きてきますので、利点と欠点を整理してみます。
利点:
①昼と夜で、全く異なる世界観を表すことができる
②夜の恐ろしさが、読者に程よい緊張感を与える
③夜に怪物が潜むという設定から、夜専用(対怪異)の武器や魔法が作れる
④夜には神も出現すると設定すれば、神を出すことが比較的容易になる
欠点:
①夜に怪物が潜むため、夜に外出など活動が困難になる
②単純に考えるべきことが多くなる
③その怪物はどこから湧いて出てきたのかの合理的な設定を組む必要がある
こんなところです。要約すれば、古代日本的な夜を導入することによってファンタジー世界に深みが出る一方、それによって作中の人間の移動・行動が時間に制限されます。またただ導入しただけで深みがでるのではなく、地道に設定を作っていく必要があるので、作者読者共に、考えることが多くなりますね。そこは作者の腕の見せ所でしょう。
夜の怪物を遠ざける呪文:
ぬばたまのさ夜ゆ
ぬばたまの聖なる夜に現れる怪異よ、私の輝く魂の霊威におののけ
〈夜を活用した作品〉
ずばり、ゲーム「風来のシレンシリーズ」の4と5が、和の夜の素晴らしいお手本になりましょう。このゲームはローグライクで、昼であれば敵をどんどん倒して進んでいくことができます。
が、夜になると昼とはまた異なる専用の夜モンスターが出現します。また、剣などの武器で切り付けても殴っても固定ダメージ1しか与えられません。倒すには「技」という、魔法のような能力を使うしか手はないのです。さらにマップも暗くなるため、極端に視界が悪くなります。剣から松明に持ち替え、一歩一歩を恐る恐る踏みしめ、魔法を使いこなしてようやくゴールに辿りつく……、この恐ろしさ、心もとなさが、大和人の感じていたさ夜に違いありません。
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