「神風」ちはやふる神とあらぶる神


〈二種類の神風〉

 いまやkamikazeとして、英語圏でも認知されている神風(1)。この語――神風は、とても簡素に言えば強い突風です。そこに神とあることから、神によって生じる風と考えられます。では一体どんな神が起こしているのでしょうか。そもそも神は起こしているのでしょうか。さらにそういう意識はなく、そこにいると起きてしまうものである可能性もあります。こういうように今二種類の神風が考えられましたから、これを意味分けして、ファンタジーにうまく落とし込んでいきましょう。

 さて、まずどんな神が神風を引き起こしているのか。考えられるものは、「ちはやふる神」か「荒神あらがみ」でしょう。古事記において「道速振る荒振る国つ神」という表現があることから、この二語はどちらも同じような意味であることが分かります。ただし、私にはわずかな違いが見て取れるのです。

・ちはやふる神:霊威が発揮されている状態の神

・荒神:霊威を自ら発揮しまくっている神

 わかりましたでしょうか。つまり、神風を意図的に引き起こすのは荒神であり、意図せずとも引き起こしてしまうような霊威の強い状態の神が、ちはやふる神なのです。まとめれば

・神の存在が起こした風=ちはやふる神風

・神が起こした風=荒ぶる神風

 になります。



〈神風、自然災害〉

 上で分類したような神風があるとしたら、なかなか面白いことになりそうです。正直この二つに優劣や威力の差はないと考えるのが適当だとは思いますが、もしこの区別がある世界に自分が住んでいたら、やはり強烈な、嵐なんかは荒ぶる神風としてしまうでしょうね。そしてちはやふる神風は、神がその霊威を保っていてほしいところで感じたいと思います。例えば神殿とか、神のいる社に常に強く吹き付ける風があるなら、それはちはやふる神風ととらえるのが和風、古代の大和的発想です。

 そういう感じ方を考えていくと、それ以上に様々な自然災害なども神の業ととらえられますね。津波は「ちはやふる・荒ぶる神波」で、雷は「ちはやふる・荒ぶる神光かみびかり」、大雨なんかも「ちはやふる・荒ぶる神雨かみさめ」になるでしょう。ここでちはやふる・荒ぶるとどちらも表記しているのは、その世界の人間がどうとらえるかというところによるためです。例えば津波が、ちょうどお供え物をしていなかったときに起きたものであれば「神の怒り」であるため荒ぶる神波といえます。理由が見当たらなかったら、ちはやふる神波というわけです。

 最後に、この知識を用いた呪文を作ってみて、終わりにしましょう。

・火山活動を休止させる呪文

:ちはやふる神な火かんなびの成す 常雨間とこあまま 掛けまくもこれ稲消ちさり しし青人草まで絶やつもの 消やすし我ら み守り給へ

 ちはやふる神の御業でありましょうこの火山活動によって、常に雨が降りません。恐れ入りますが申し上げますと、それが稲を枯らし、鳥獣人間まで絶やしてしまっています。私たちはもろい生き物ですから、お守り申し上げてください。



(1)エミネムのアルバム名、および曲名にもなっていますね

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