和風ファンタジーと魔法②

〈呪文と枕詞〉

 言霊と魔法の関係をもっと掘り下げるたければ、呪文という概念を持ち出してみてはいかがでしょう。呪文は、言霊が一単語、語句といった短いものであるのに対して、幾文も連なった魔法の言葉といえます。神社で上げている祝詞や、祓詞はらえのことばのようなものです。例えば

呪文1:とりよろふ 山にあつまりし 鳥獣 くにに根付きし 草木らよ いよよますます ふゆ力 我に打ちよせ 押し寄せよ

=とりよろう山に集まる鳥獣たち、また土に生える草木たち、さらにますます成長するちからを私に送っておくれ。

呪文2:ちはやふる神風 神の御前のあたどもを残らず消ちたまへ

=ちはやふる神風をふかす神よ、その前にいる敵を、一人残らず消し去ってください

 

 など。呪文1は五七五調。呪文2は音の型こそありませんが、そのかわり音に左右されず言いたいことだけを直接的に言うことができます。ただ、これらはそれぞれに一長一短あることを頭に入れておいてください。音の型がある場合、神秘性は保たれますが、先も言ったように音に縛られるため長引くことがあります。一方なければ無いで、創作は簡単になりますが、神秘性が薄れ呪文感がなくなります。


 さて、そして「枕詞」について。枕詞は現在までの研究をもってしても語義が未詳なものがありますので、これを使うだけで「呪文感」が一気に増します。またこうした専門性を一つ入れるだけで、何も知らない一般人が魔法を使ってしまいてんやわんやになる危険性も極端に減らせます。ちなみに使い方ですが、これは現実と同じでいいでしょう。呪文1の「とりよろふ」とか、呪文2の「ちはやふる」のように、そのすぐ後ろにかかる言葉を置けばいいのです。自分で考えられるのも、うれしいことですね。例えば敵を倒す場合の文言、「(人)ほふる」には「八重やへ血いづ」を枕詞とする、とか。


 

 さて、ここまで呪文を説明しておいてなんですが、魔法呪文型は、そもそも導入できるファンタジーを選ぶかもしれません。というのも文言が長いという特徴がありますから、呪文の詠唱が極端に遅くなってしまいます。そうなるとどうしても展開が遅くなってしまうので、例えば戦闘で魔法を瞬発的に使うとかは難しいでしょう。どうしてもやりたい場合は、速攻呪文など新たな要素を追加しましょう。

 またいちいち詠唱の文句を考えなくてはならないため、もしそういった創作が苦手である場である場合は控えた方がいいですね。

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