TRPGの世界にクラスで転移!? と思ったけど、ぼっちだったのでソロスタートのようです、人外娘と愉快な仲間達と国を作ります!
HIRO
Prologue 導入
第1話
令和XX年 6月某日
「楽しみだな! 京都!」
「あ、お菓子喰う! 俺たくさん買って来たんだよねー」
「それで彼氏がさー」
「えー! マジでー!」
「雨だけど、テンション上げて行こうぜー!」
『ウェーイ!』
バスの中、多くの喧騒を漫然と聞きながら僕は意識を手放しかけている。
吐き気と頭痛が酷い、何故このような地獄の所業を僕は受けているのだろうか。
その事に触れるには、僕自身がどういう人物なのかを語る時間と。ここ数か月の僕の高校生活を振り返る必要があるだろう。
僕の名前は
見目は特に特徴と言う特徴が無い、いや低身長かつ痩身である事は特徴といえなくもないかな、ただ顔の造形は本当に特徴が無い、所謂塩顔男子という奴だ。
まあ、その顔も外国人からしたら、童顔やらベビーフェイス扱いされるから特徴と言えば特徴なのかもしれない、案外特徴の無い人間なんていないもんだよ。
そして何故バスの中で酷く衰弱しているかと言えば。僕はこういった乗用車による移動手段という代物を嫌う人間だからだ。同じ理由で新幹線や飛行機の類も不可能だ、例外として外の空気を取り込んだりすることが出来ればいけるが。
なら、バスの窓を開ければいいでは無いかと思うだろう。しかしながら本日の天気は終日雨模様だそうだ、窓を開ければずぶ濡れは確実。加えて、僕は低気圧に弱く今も頭が痛くて仕方ない、吐き気も相まって気絶寸前だ。
であれば、気晴らしに同い年の友人達と話をしてみればと言う様な奴は、さぞ学生時代に良い思い出を持つのであろう、正直な話羨ましい限りである。
お前だってまだ学生ではないかだって? そうだ、そう言う意味ではこれから思い出を作っていけるじゃないかと思うだろう、だが、それは共通の話題に困らない人種がいればという前提条件が必須とは思わないかな?
そして彼らクラスメイトと僕の間には共通の話題というものが無く、普段から交流すらもほとんど無いという物だ。彼彼女らは大なり小なり、運動系の部活動に励む所謂体育会系だ、そうじゃない者も、話の内容と言えば色恋が中心と来たもので。
深い内容でゲームや漫画、アニメの話はしないと来たものだ、要は僕はぼっちだ。
ただ、悪い人達ではないのである、真の陽キャとは性格も太陽の様に明るいのだ。
僕に対して、いじめをしたりせずに連絡事項があれば教えてくれるし、挨拶程度なら交わしたりもする、現在のグロッキー状態を心配して酔い止めとエチケット袋を用意しようとしてくれた子もいる、まぁどちらも自前で用意しているので断ったが。
ちなみに僕の座るバスの隣には先生や他生徒の荷物の類が転がっている、余りの席に僕がいると言う事だ。
さて、まぁ次に語る、そんな酔いながらバスに乗っている理由だが、こちらについては更に数か月前に遡る事になる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
令和XX年 5月某日
「えー、来月に行われる修学旅行の班決めを行います」
『ウェーイ!』
「一緒に組もうぜ!」
「こっちこっち、ウチらで組もうよ」
「なぁ、俺も入れてくんね!」
僕がバスに乗っている理由、それはジャージ姿でいかにも体育会系です! という若い女性の先生の述べた通り修学旅行である、周りの生徒は班決めと言われて喜々として組み始めており、僕は数分もすれば一人ぼっちになっている。
「あーっと、てんはなてらくん? だっけ」
「はい、なんでしょうか、先生?」
先生が見かねて、僕に声をかける、名前が分からないなら名簿にフリガナを振れとは小学生の頃から思っているし、中学までは先生にこれでもかと嫌みたらしく皮肉を込めて行ってみた物だが、もう面倒くさくなって訂正しなくなった。
先生は続けて、班が決まって無いのが僕だけの事やあの班が入れてくれると言うので、そこに入りなさいと言う事等言われた。無断欠席で当日は休んでしまうつもりだった為どこでもよかった……のだが。
「修学旅行の準備、しておいたから」
「母さん、休んじゃ駄目?」
「駄目」
「…………はい」
僕の両親は僕になんら期待していないくせに、学校には通わせようとする。
それに修学旅行に行ってる間、僕の面倒を見なくていいと言う打算もあるだろう。
中学生で天才と言えるくらい勉強も運動も出来る弟には期待を寄せている。
所詮、僕は出来損ないの長男と裏では思っている事に間違いないだろう。
行きたく無いと、言い続ければ、行かなくてもいいかもしれないが、そうした時の暁には、一切の世話をしなくなるだろう、実際、中学の時の修学旅行をこっそりサボり帰って来た時には、一週間程、千円を握らせるだけで、育児放棄された事がある。
まぁ、小学生の頃から、度々お金を握らせるだけの時期は多々あったが。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「回想終了、GM《ゲームマスター》、シーンを移行してくれ」
「シーン?」
「なんでもないです……」
こんな様々な事情で僕は衰弱しながら、生き地獄を味わっている訳だ。
うわ言でシーン制のTRPGよろしく、移動しましたで終わらない者かと思い、現実にいもしないゲームマスターに呼びかける。地球のゲームマスター、神様かな?
通路を分けて座っている先生が僕に向かって訝し気な目線を送る、まぁ、そうなりますよね、とりあえず、大丈夫なんでと声をかけてから、目を瞑り寝る事に集中。
寝てしまえば、酔いも何も関係ない。
「う、うわぁぁぁぁあ!!!!」
「っちょ、なにこっちに倒れ込んできてるの!」
「なになに、凄いブレーキ音なんだけど!」
「っちょ、窓のそっ!?」
朦朧とした意識に聞こえる喧騒が、和気藹々とした者から、悲鳴や怒号、驚愕の声に変わっていた、けたたましく、バスのブレーキ音と同時に、重い衝撃が襲う。
僕の意識はそこで、暗転した。
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