第30話 角川文庫版の赤毛のアンは優れた文学作品


「はーい、皆さん。おはようございます」


「おはようございます」


「今年もゴールデンウィークの季節になったわねぇ」


「・・そうですね」


「何よ、暗い顔して。アンタは元々根暗なのに」


「悪かったですね、暗くて」


「うわ!開き直ったよ、コイツ!」


「これは暗いと言うより鬱ですね」


「えぇっ!どうしたの ? 何か原因でも ? 」


「その原因が、さっきから私の前で喋ってます」


「へ ? それってアタシの事 ? 」


「あなた以外の誰がいるんですか」


「テメェ!人が優しくしてたら、つけあがりやがって!」


「あなたが優しかった事なんてありましたか」


「フッ!お前は言ってはならぬ事を言ったな。くらえ!スターライトエクスティンクション!」


「ぐはっ」


「見たか!天かける黄金の牡羊の力!」


「・・・・・」


「あら ? ねえ、ちょっと ? 」


「・・・・・」


「あら、ヤダ。マジで心臓とまってるよ」


「・・・・・」


「皆様。少々お待ち下さい」


2時間31分経過


「はっ!ここは何処 ? 私は誰 ? 」


「あら、気がついた ? 」


「あの・・あなたはどなたですか ? 」


「チッ!記憶が飛んだか」


「あの、何を言ってるんですか ? 」


「歯を食いしばれ!」


「え ? え ? 」


「闘魂注入!」


バシイィィィン


「ぬおぉぉぉ!」


「目ぇ、覚めたか!」


「何でいきなり殴るんですか」


「あら、元に戻ったみたいね」


「え ? 私に何かあったんですか ? 」


「知りたい ? 」


「・・いえ、結構です」


「フッ!その方が身の為よ」


「どうせロクでもない事でしょう」


「何よ!冒頭からアンタが暗いからいけないんでしょ!アタシは被害者よ!」


「某国みたいな事、言わないで下さい」


「失礼ね!まっとうな被害者ビジネスよ!」


「また御幣がある事を」


「ま、良いわ。何で暗かったのよ ? 」


「いえ、連休なのに緊急事態宣言で」


「その事か。簡単よ。家で出来る事を楽しめば良いのよ」


「例えば ? 」


「ゆったりと読書とか」


「なるほど。何かお勧めの本はありますか」


「そうねぇ。赤毛のアンシリーズを読むとか」


「やっと、タイトルの話題になりましたね」


「世の中では赤毛のアンシリーズを児童文学だと思ってる人が多いのよ」


「そのような傾向はありますね」


「とんでもない!アンシリーズはとても優れた文学作品なのよ!」


「そうですね。しかし角川文庫版とは ? 」


「訳してる人が違うのよ」


「は ? 赤毛のアンの訳者は村岡花子さんでは無いのですか ? 」


「一般的にはね。最初に訳したのは村岡花子さんだし」


「それでは、角川文庫版では違うと ? 」


「正解。角川文庫版では、中村佐喜子さんって方が訳してるわ」


「小説の内容が違うとか」


「それは無いわ。同じモンゴメリの小説を訳してるんだから」


「何が違うんですか」


「うーん。これは実際に読み比べないと判りづらいんだけど」


「はぁ」


「村岡花子さんの訳は文章が堅い、って感じかな」


「ふーむ」


「中村佐喜子さんの訳は文章が柔らかくてユーモアがある」


「なるほど」


「これは実際に読んでみないと理解できないと思う。アタシは角川文庫版の「アンの婚約」までを最初に読んだから、村岡さんの文章に違和感を感じたの」


「同じ原作でも訳者によって、そこまで違うのですね」


「まぁ、これも読む人の好みにもよるから。アタシは中村さんの方が好きって事」


「やはり、文章力と言うのは重要なんですね」


「そりゃそうよ。小説は文章の積み重ねなんだから」


「それでは、私も」


「何か読む気になった ? 」


「録画したままになってるドラマでも観ます」


「テメェ!人の話を聞いてないんか!許さん。鳳翼天翔!」


「うぎゃぁぁ・・」





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