第14話現代日本とはゆったり感が違う。

確かに性悪貴族がいたり、悪司教がいたり、どら息子の皇太子がいたりするが、基本的にのんびりで時の流れが緩やかに感じる。

そんな発展途上の異世界が好き。

都市間が馬車で数日とか、風任せの船旅とか、街道の山越えで野宿とか本当にゆっくりだ。

そんな世界をコンキュストさんと、子供達と一緒に歩んで行きたい。

コンキュストさんの生まれた国も、アルーシュさんのいる国も、今は平穏で国王や摂政達がしっかりし国を管理しているから、数十年は平穏と思える。

僕にはそんな緩やかな世の中の方が性に合っている。



そして今は、お世話に成った村を離れ、元凪の光神殿跡に居を構えている。

近くの村や町から歩いて四時間くらいだろうか?。

距離だと20㌔ぐらいに成る。

そんな山の中だが、なだらかな丘陵地帯なので、ハイキングの感覚で訪れる人もいる。

最初の頃は凪の光が復活かと軍隊まで来たが、ただの世相から離れて暮らしたい家族と、理解してくれた様だ。

10人の子供を得て僕は自分の魔法で、子種 を出来なくした。

病気による高熱でその機能が失われる事は知っていたので・・・。

だってこのまま行けば、僕の子孫でこの世界を埋めつくしちゃう。

チンギスハーンじゃ有るまいに、不公平だろうそれじゃあ。

奥さんも納得してくれた。

あっ、現役ですよ、僕も奥さんも60年以上経った今でも。

あはは・・・は。



息子が6人娘が4人その内、今も僕たちと共にいるのは、末っ子の娘夫婦だけだ。

中年夫婦だが、娘の方がかなり若く見える。

旦那さんごめんね、仕方ないんだよ。

旦那さんはそれを知って付いて来てくれた。

有難い。

丘陵地を耕し麦を植え、少し平坦な所は水を引き稲を育てている。

大豆から味噌と醤油を作り、水捌けの良い土地では、甜菜やさつま芋そしてブドウ等を育てる。

塩は昔少し懸想した宿屋の娘さんの、近くの漁村で作って貰っている。

こちらに来る前の村でも味噌と醤油は作っていたので、あの村でも醤油は名産品に成っている。

まだ鰻丼のお店やってるかな?。

こちらでは甜菜の砂糖を使ってタレを作ったので、あちらの鰻丼より甘いと思う。

色々な作物のおかげか、神殿跡の裾や回りの丘陵地帯には村が出来た。

商人も寄ってくれるので、作物や砂糖それに日本のモノを売っている。

ガラスはあるのでジュースとか詰め替えたりするのだが、殺菌は魔法なのは内緒。

まったりと田舎生活を満喫中だ。

だけどな、1人息子が行方不明なんだよな。

まさに鉄砲玉だな男の子は。



親として息子が何処で何をしてるか気になったので、ヨシ子様に場所が分かるか聞いてみた。

即答で無理だと言われた。

異世界なんてものは無限大に有るのだそうだ。

行方不明に成れば全宇宙を探すより困難だそうな。

ただ蜥蜴の神様には生死は分かるらしい。

異世界航行の声はあの神様の領分だからだ。

だけど居場所は検索に時間が掛かるからしないと言う。

・・・・・酷い。

その内帰って来るでしょうと。

神は意外と無責任だった。



一緒に暮らしている娘夫婦の女の子は7歳に成るが、めっちゃ歌が上手くてびっくりした。

そう言えばコンキュストさんも上手かったなあ。

以前の村で生活してた時、彼女に空に浮かぶ城の某アニメの歌を教えたら、凄く上手くて音痴な僕は落ち込んだ事が有ったよ。

他のアニメソングや昭和・平成のJポップスも教えてあげた。

僕の外れた音階で・・・。

『ねえコンキュストさんは歌を習った事有るの?。』

『歩き巫女の前は私神殿で合唱団にいて、単独であちこちにも派遣されてました。』

・・・そっ、それはプロですよね、日本で言う。

孫娘は遺伝だなこりゃ。

最近は孫娘、近隣の町や村で歌でのイベントに参加して、お小遣い稼いでいるとか。

もうプロかよー!。

そう言えば、天空の・・・アニソン村や町で流行ってた様な。

それかぁ~。

因みに孫娘のエヴァの歌に感動する僕で有った。



此の世に神様が本当に居るなら~、と口ずさみながら今日も今日とて農作業していると、行方不明の息子が突然帰ってきた。

「お前なあ・・・何年姿見せなかったと思ってんだ、バカヤロー」

嫁さんは側で目を潤ませてハグしてた。

はあ~無事で何よりだ。

奇抜な格好で現れた息子は、日本より遥かに発展した文明世界にいたらしい。

「いやあ好きな娘が出来ちゃって暫く暮らしてた」

「ほうほう、でその娘は?」

「別れた」

「そうか、でもな少し位連絡入れろよ。母さん凄く心配してたんだぞ」

「ごめんね母さん、色々心配させて」

ポンポンと無言で涙ぐみ肩を叩くコンキュストさん。

「ったく」

「母さん、母さんの鰻丼食べたい」

「はいはい」

我が家は今日は鰻丼の様だ、僕よりコンキュストさんの鰻丼は遥かに旨い。

う~ん・・・何でかな?。


1週間経ったある日村で息子と若い娘さんが仲良く歩いてた。

声は掛けずに離れて見ていたが、スケコマシって聞こえない様、親指を下にしてバッドサインを送ってやった。

お嬢さん騙されるなよ、そいつはその見た目でも、40手前のの中年オヤジだぞ。

息子は昔からモテたからなあ。

ちくしょー。

いや僕はコンキュストさん一筋なんだと、呟く今日この頃。

今日の夜はコンキュストさんと久しぶりに・・・頑張ろ。

まだまだ現役だから・・・。

今日は駄目、拒否されました。

なぁ~むぅチーン。





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