第3話取りあえず職業を決めるテルさん②。
翌日僕は何か仕事が無いか探しに行く事にした。
暇なのだ、金は有るけど。
御使様の名前はアルーシュさんと言う。
今まで迂闊にもお名前を聞いていなかったのだ。
アルーシュさんが言うには総合ギルドなる所に行けば良いらしい。
各業界が集まった小さい町や村に有るギルドと言う。
歩いて数分の所にアルーシュさんの役所と同じ位の建物が建っていて、総合ギルドと門塀に有った。
入って案内板を見てぐるりと廻ったら、1階が各ギルドの案内所と受付で、2階が各事務所と職員の仮眠場所、3階は各ギルドの資料室で図書館みたいな場所だった。
1階に戻り総合職業斡旋コーナーなる所で仕事を探そうとしたら、女性職員に声をかけられた。
クラントさんと名乗ったその方は未だ18位の若い人だ。
「あの護衛をお願い出来ませんでしょうか?」
「えっ」
「そのう~剣をお持ちなので」
「あっ、いやこれは護身用の脇差し・・・ショートソードでして、剣を扱える腕じゃ無いですよ」
脇差しは今朝アルーシュさんから護身用にともらったのだ。
「剣を持っておられる方が一緒にいて下さるだけで良いのです」
「戦闘になる事はまず無いと聞いております」
「盗賊と言っても二人組位でナタなんかで脅す程度です」
「剣を持った人の前には出て来ない様なので」
はあ・・・
「良いじゃない」
声がした後ろを見るとアルーシュさんが立っていた。
「あっアルーシュさん、でも本当に僕は刀振った事無いので」
「じゃあもう一人私の部下をつけましょうそれなら安心ですし」
マッシュと声をかけた先には普通の長さの剣を携えた、大柄な20代半ばの男性がいた。
強そうだ。
お兄さん!。
ん?。
クラントさんが大きい声を出したよ。
兄弟なんだ。
「わかりましたではお二人にお願い出来ますでしょうか」
「テルさんマッシュと二人なら良いんじゃ無い」
「はい決まり」
アルーシュさんの一声で決まってしまったけど良いのかな?。
てか僕流されてるなあ。
報酬は日本円にしたら1日一万五千円だろうか。
高いか低いかはなんとも言えないけど、戦闘にはならないって言うし大丈夫だろう。
命懸けだったら安いよ。
でもこれはキツかった。
標高200メートルほどでも、10回以上往復したらキツかった。
明日もか?。
とぼやいたら、マッシュさんに笑われた。
体鍛えて無いからなあ。
脇差し重いし。
翌日も荷物を運搬する人の護衛をしてたら、前後を7・8人の武器らしき物を持った奴等に囲まれた。
えっ、二人組処じゃ無いぞ。
荷物を運搬する人はとても荷物が邪魔で戦え無いし。
マッシュさん一人で前後のこの人数は無理だ。
やみくもに脇差し振り回すしか無いかなこれ。
ヤバイな。
「別に全部とは言わない、命も取ろうとは思わない」
「そんなに金を持ってるとは思って無いから、塩と少しの金でいい置いてってくれ」
「それは出来ないこの塩を渡したら、今度から仕事が貰えない」
そうそんなに仕事が有る町でも無いのだ。
わかる気がする。
「あんたら2人、俺らを相手にするより逃げた方が得策だろ」
「護衛が逃げる?、本気で言ってるのか」
マッシュさんは鼻で笑った。
僕達に話した盗賊の頭目らしき男は、苦虫を噛み潰した様な顔で素早く剣を抜こう・・・とした。
あれっ?、・・・僕の脇差しがその腕を切り裂いていた。
頭目らしき男は三分の一も剣を抜けずにその場で、うめき声と共にしゃがみ込んだ。
えっ?。
前世で居合いなんて習って無いんだけど。
なんと他の7人はそれを見て逃げ出してしまった。
僕は呆気に取られるだけだった。
頭目らしき男の服で、ごめんと言って刀の血を拭った。
「くそっ、殺せ殺しゃあがれ」
その男はそう言ったが、取りあえず腕を布で縛って血止めをし麓まで連れて行った。
麓の役人に渡して運搬作業者と何往復かしてその日は終わった。
飯屋でマッシュさんと食べていたら、マッシュさんがなんだあの技はって聞いて来た。
いや居合い切りだと思うけど、一度も使った事無いので、それで有ってるか解らないと言ったら。
嘘だろって抜いたのが見えなかったぞって言われた。
・・・本当に知らないんだよね。
翌日僕は凄腕の剣術使いと噂が流れていた事が判明した。
ううう、違うと思うけど。
何で体が勝手に動いたのかな。
護衛をしながら考えていた。
今日は平和だ。
帰って飯屋で晩飯を食べながら思いついた。
五百年前僕は強い武将だったらしい事に。
アルーシュさんの家にお世話に成っているので、帰って聞いてみた。
御使様なら何か知ってるだろうと。
「貴方義照って知ってる?」
「いや知らない武将ですけど」
「そう足利義輝なんだけど」
「足利あぁ~‼️」
それ、武将って言うより将軍様ですよね御使い様アァ~。
アルーシュさんに聞いたら十三代足利将軍だった。
暗殺された時に三十人ばかり傷を負わせた凄腕の剣士だったらしいが、凄惨な最後だったとも言われた。
本当に死んだか棒で叩いたり槍で突いたりして確かめる程、暗殺者側は恐怖したと言う。
塚原卜全の弟子で有ったとも。
「いやだからと言って僕が刀を使える訳無いですよ」
「貴方が事故で死んだ時体を再構築して転生させたわよね」
『その時に義照の身体能力の記憶だけ入れたのよ。』
「出来るだけ此方では長生きして欲しいって神様がね」
「でも一人だけ斬った時点で他の盗賊が逃げたのは運が良かったわ」
「まあ紛れで8人は無理ですから、あはは」
「違うわ、他の能力まで披露しなくて良かったからよ」
「はぁっ?」
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