第2話

俺は今絶賛落下中だ。

もう10秒ぐらい落ちているがまだ底が見えない。

思い返せば勇者に誘われたときに怪しむべきだった。

職業が「無」であることを理由に差別されていた俺が、勇者に必要とされるはずがなかった。

人間は誰もがみな職業を持っている。

戦闘向けには、魔術士、戦士、剣士など

生活向けには、薬師、鍛冶師などだ。

勇者は世界で1人だけ、すべてのステータスが高い。

そんな中での「無」。

職業の説明欄には「なにもかもが無い」としか書かれておらず、

よくわからなかった。

存在感がない、才能がないのもこれのせいかと思ったがわからなかった。

幸い、こんな俺でも鑑定とアイテムボックスのスキルだけは芽生えたので

一応勇者たちの役には立った・・はず。

それ以外に役に立ったといえば、サンドバックになったくらいか。

勇者と戦士は暇さえあれば俺を叩き、蹴飛ばした。

あっ、最近は斬られることもあったわ。

魔法使いはというと、俺に攻撃してるふりをして回復魔法をかけていた。

悪気があるようには見えなかったが、それのおかげで苦しむ時間が増えたことは忘れていない。

しかし、いいこともあった。

あいつらにいじめられたおかげで俺の体力は結構上がった。

また何度も振るわれるこぶしを見ていたら、スキル「見切り」を習得した。

あいつらのやたら多い休憩中に襲ってくるモンスターを倒していたら攻撃も上がった。

でも、教えたところで無視されるから勇者たちには教えてない。


そして今のステータスがこれだ。


レベル300

名前:村人A

年齢:18

性別:男

職業:無

攻撃:1815

体力:25600

防御:30

魔力:1

精神力:580

スキル:鑑定

    アイテムボックス

    見切り

装備:錆びた刀 攻撃+5


精神力は魔法に対する防御力みたいなものだ。

もっとも俺は暴言で鍛えられたけどな。


そして勇者がこれだ。


レベル75

名前:アラン

年齢:18

性別:男

職業:勇者

攻撃:670

体力:300

防御:400

魔力:250

精神力:250

スキル:剣聖

    聖魔法

    風魔法

装備:聖剣 攻撃+300

   白金の鎧 防御+100


すべての能力が250を超えている。

それだったら、俺のほうが強いのではともうやつもいるだろうが、そんなわけがないだろう?

奴は腐ってても勇者。

無職の俺がかなうわけがなかろう。

きっとステータスを隠してるに違いない。

そうに決まっている。

絶対そうだ。


っとそうこう考えてるうちに遂に底が見えてきたぞ。

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