村人Aが強すぎる
坂下ドラン
第1話
勇者「・・・というわけだ」
この日俺が運び屋として所属する勇者パーティーは
その実力に見合わない難関ダンジョンに来ていた。
まだまだ若造と呼ばれているのになぜと思っていたが。
なるほど。
つまりは俺をこのダンジョンの最深部の偵察のためという理由を付けて目の前の大穴に落とす。
それが目的だったらしい。
いやいやいや、絶対死ぬよね?
でも、言いかえしても無駄と分かっている俺は、
「そうですか。わかりました」
と答えるほかなかった。
国に国宝のように大切に扱われ、数々の強敵と戦い成長している勇者。
モンスターの骸を運んだり、物品の補充をしたりする、いわば「寄生」しているだけの運び屋。
戦っても結果は明白だった。
戦ってもがき苦しみながら死ぬよりは1発で楽になりたい。
だから俺は素直に了承した。
ふと顔を上げると
勇者の後ろでは、戦士の男がにやにやしている。
魔術士の女は悲しい顔をしているが気にしたって無駄だ。
どうせもう死は決定事項なのだから。
俺「落ちる前にどんな穴かのぞいてみてもいいでしょうか?」
勇者「ああ、いいぞ」
俺「ありがとうございます」
深い。暗い。大きい。そう考えていると、戦士の男が言った。
戦士「時間の無駄」
その瞬間私は頭から穴へ吸い込まれていった。
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