第2話 無使用建築物探険家とは
無使用建築物探険家。
私たちの家業はそう呼ばれている。
「無使用建築物探険家」は、世界中にある使用されていない建築物を探し、実際に現場に
何故このような仕事があるのかというと、使われていない建物を拠点にして、よからぬことを企む人間がいるからである。
――人が使っていない建物及び、施設を利用した組織の創設の阻止。
そのように言ったほうが分かりやすいだろうか。
私たちの表向きの仕事は「探険家」。しかし実際は、政府から正式に命令を受けて動いている。
今回は「北の大地にて、使われていない建物があることを衛星写真で確認したため、それを見てきてほしい」と言われた。よって私たちは、使われていない建物に人が住んでいないことを確認し、もし住んでいた場合はその人物が何者なのかを聞き出すか、探り出さなければならない。
私は任務に従事するとき、いつも願っていることがある。それは「調査する建物が無人」であること。
私たちの仕事は「探索」がメインのため、建物の破壊や人がいた場合の戦闘は出来るだけ避けたいところである。もちろん危険を伴う職業柄、戦闘の訓練は受けている。しかしそれに特化しているわけではないし、完全武装して乗り込むわけでもない。それは私たちの仕事があくまで「調査」であることにつきる。
そのため通常は私たちの調査から、危険な組織が存在していたことがはっきりと分かると、破壊や戦闘に優れた軍隊が派遣され、対処することになっているのだ。
ただ緊急を要する場合は突入し、その組織を壊滅させることもある。実際そうなった調査は過去に十数件あった。中には死傷者も出た事例もあるため、出来ればそうならないことを祈っている、というわけだ。
私たちが軍隊と違うところは他にもある。それは十五人前後のメンバーに「子供連れで行動する」ところだ。
仕事仲間の中には反対する者もいるが、子供を連れているメンバーからすると相手を油断させることが出来たり、言い訳の口実にもなると言っていた。
そしてこの探険に参加している十歳前後の子供たちは、すでにこの仕事がどういうものかを知っており、危険時にはどのようにすればいいのか訓練されている。
一方で対策も怠ってはいない。私たちが使っている車は特殊で、子供用の避難用シェルターがついている。そのため相手が大きな爆弾などを持ち込まない限り、彼らの安全は確保されている。
本当に危険であると最初からわかっている場合は、現場に連れて行くことはないのだが、「探険家」と言う家業は子供と親が離れる時間が必然的に多くなってしまう。そのため「子供を連れて行きたい」と思っている親は迷わず連れてくる。そしてそれが政府が掲げている教育方針により許されているのだ。
そのため私の父も時折私と弟を連れて仕事に出掛けた。「父の言うことをちゃんと聞かなくちゃいけない」ということだけは、幼い頃から頭にはあったのだが、実際父が何をしているのかが本当の意味で理解できたのは14歳くらいだったように思う。それまでは「緊張感のある探険ごっこをしている」という感覚だった。
しかし父親と一緒に各地を巡ってきた私が言うのもなんだが、自分が親の立場ならば子供は連れて行かないと思う。
それはある意味で子供が人質としてとられても任務を優先させろ、と言っているようなものだ。もちろんチームにいる子供は全力で守るが、それが自分の子供だった場合冷静でいられるものだろうか。
――と自分の意見を書き記してはみたが、私には子供がいないし、そもそも結婚もしておらず、その相手すらいないのだが。
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