第13話 橘蓮⑬

 現在。

 蓮は柊の力を抑え、余分な力を相殺させ、辺りを鎮めた。

 蓮は政府の認可をなんとか受け、そこそこの高校と短大を出て、探偵をやっている。

 高橋兄妹のような今回の事件を専門に請け負うのは、同じ悲しみを防ぐ為でもあった。

 それが、贖罪だと蓮は思っている。感情を失っても頭では理解していた。

 少なくとも高橋兄は誰も失わず、何も背負う事無く良かったと、顔は無表情だったが、確かに思っていた。

「力が収まった。君は?」

 驚きながら問いかける。

「政府公認の能力者ナンバー2010番。風の能力者、橘蓮」

 蓮は淡々と自己紹介をする。

「君の力は抑えた。これからどうするかは君次第。使わなくとも、使っても自由。だけど……」

 蓮は桜に目を向ける。

「桜」

「兄さん。帰ろう」

 桜は手を差し伸べる。

「桜。僕は」

「確かに、能力者は怖いけど、私は兄さんが大事だから」

「失踪するなら、彼女の事を考える事、でなければ……」

 蓮は話の途中で突然後ろから倒れる。

 そこをタイミング良く瑠衣が支えた。

「ありがとう。叔父さん」

「お兄さんだ」

「どっちでもいいや。疲れたから……」

 蓮はゆっくり目を瞑った。

「ちょっと、蓮君」

 後から来た蘭が驚く。

 高橋兄妹も同じであった。

「能力使って、疲れて寝ているだけだ。いつもそうだろう? 俺は可愛い寝顔が見れて、嬉しいけどな」

 瑠衣は蓮の頬を突っつき楽しむ。

「すみません。僕が」

「気に済んな。蓮が決めた事だ。まあ、これ以上妹さんを心配させないのが、一番だと思うよ。蓮が言いたかった事でもあるがな」

 瑠衣が笑い、蘭もつられて笑う。

「はい。桜。ゴメンな」

「ううん。兄さん。お帰り」

「ああ、ただ今」

 こうして、失踪事件は幕を下ろした。

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