第10話 橘蓮⑩

 今は空き家となった貸店舗の前に四人が立っている。

「ここに兄が?」

「うん」

 蓮がゆっくり頷く。

「覚悟はいい?」

 蓮は確認する。

「はい」

「分かった」

 ゆっくり扉を開けた。

 すると殺気が風に乗って飛んでくる。

「なに、これ、息苦しい」

 蘭は口を抑える。

「叔父さん」

「お兄さん」

「あれ、守れる?」

 蘭を指差す。

「名前で呼べ、指を指すな!」

 蘭が吼える。

「蘭ちゃん? 当たり前だ」

 瑠衣がドヤ顔をする。

「僕になにかあったら……」

「何も起きない。蓮は強いんだからな。自信もて。ついでに俺を頼れ」

 言いかけ、瑠衣が止める。

「うん。分かった。叔父さん」

「だから、お兄さんだ」

「行くよ」

 蓮は桜の手首を優しく握り、瞬間移動をする。

「蓮君」

 蘭は追いかけようとしたが、瑠衣が引っ張る。

「ここから先は、俺達の出番は無いから、蓮を信じて待とう」

 瑠衣は真剣に蘭を見る。

(たまに、蓮君や瑠衣が遠く見える)

「うっ、うん」

 瑠衣に言われ、渋々蘭は待つ事にした。

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