第4話 橘蓮④

 蓮と蘭と桜は事件現場に足を運んだ。

 そこは、街の中で、人が行き来している人通りの多い所でもあった。

「蓮君。何か分かる?」

「全く」

 推理する事は愚か、見ただけで、何処かへ行こうとした。

「何処行くの?」

「帰る」

「検証は?」

 蘭が呼び止める。

「もう、やった。何も分からないし、何も残っていない。それだけ分かったから、それでいい」

「蓮君。何が分かったのよ!」

「100%能力者で、能力は僕と同じ、これだけの人通りで誰も見ていないのは、人の無関心を利用したからだろう。高速で人を飛ばすのは無理無いよ。僕でも出来る。突風はその時に吹いた物だ」

「そうですか。それで兄は何処にいるのですか?」

 桜が質問する。

「さあ、それを家に帰って調べるんだけど?」

「はあ」

 桜が深いため息をついた。

「文句あるなら……。むがっ、ふがっ」

「蓮君。これ以上はダメ」

 蘭が急いで、蓮の口を塞ぐ。

 蓮の体は蘭より小さいので、蘭が体を覆うのは簡単であった。

「全く、何で、性格が悪いかな」

「ふん」

 蓮はそっぽを向く。

「帰って寝る」

 蓮は蘭を鋭い目つきで睨む。

「ちょっと、調べるのは?」

「気分が乗らなくなった。僕、性格が悪いから」

 蓮はスタスタと歩く。

「もう、その時だけ気にして、本当は気にしてないくせに。ちょっと、蓮君待ちなさい!」

 蘭が触れようとした瞬間、蓮は突如消えてしまった。

「えっ、蓮君。嘘!」

「兄と同じだ」

 蓮が消えたすぐ、突風が吹き、蘭と桜は驚く。

「ちょっと、蓮君!」

 蘭は焦り、辺りを見るが、蓮の『れ』の字も痕跡は残っていなかった。

 二人はしばらく、蓮を探したが見つからなかった。

「蓮君……」

 蘭が涙目になった所ですちゃらかな、場面に合わない明るい音楽が鳴った。

「この音楽は……」

 蘭は嫌な予感がする。

 蘭は人によって着信音を変える。

 ちなみに、蘭は蓮からの着信が着た事は無いが、蓮は第九である。深い理由は無いが蓮のイメージだ。

 すちゃらかな音楽にあまりいい表情を見せないのは、その音楽とは裏腹に蘭が期待していないからだ。

 それは、瑠衣である。

「もしもし」

 蘭は機嫌を悪くして電話に出る。

『もしもし、蘭ちゃん。悪い切符切られた』

 瑠衣はスピード違反で罰金を払う事になった。

「知るか!」

 蘭が怒鳴るのも無理は無い。

『そんな~』

「金なら、出さないから」

『ひでぇ、横暴だ。俺と蘭ちゃんの仲だろう。それに、依頼料入るだろう』

 ダメな大人のダメな頼みをする。

 ここまで図々しいと尊敬に値する。

「切るぞ変態」

『ああ、切らないでよ。伝言を頼まれているんだ。蓮に』

 そう、蓮から蘭に電話がかからないのは、瑠衣に伝言するからだった。

 蓮は蘭を嫌っているのか、蘭以上に瑠衣を信用しているのか、真意は分からないが、瑠衣がこうして伝言するので、すちゃらかな音楽がよく流れるのだ。

「蓮君から!」

 蘭は期待する。

『ああ、一言。早く帰って来い。だって。なあ、なにがあったんだ?』

 瑠衣は勿論状況を把握していない。

 ただ、伝えているのだ。

 瑠衣は蓮の詮索はしない。

 蓮が話したがらないのを知っているからだ。

「あんたには関係無いわ」

 蘭は素早く電話を切った。

 五月蝿く聞かれるとたまった物ではない。


 瑠衣は白バイに見張られていた。

「あっ、えーと、蘭ちゃん……」

 気まずい雰囲気になった。

「払って下さいね」

 白バイのお姉さんが笑顔で言う。

「はい……」

 瑠衣は泣きながら、なけなしのお金で罰金を支払った。

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