第35話 <部活動!>
翌日、早速私とイリヤで冒険部に入部届を出した後、帝都の冒険者ギルドにやって来た。
さすが帝都ね。ペルスティアのギルドも大きかったけど、ここは規模が段違い!
ただ、人はそれほどいないんだよね。まぁ、学校終わりのこの時間だから多くの冒険者はまだクエストから帰ってきてないだけなんだろうけど。
さて、立ち話もあれだしなんかクエストが残ってないか掲示板でも確認しますか。
「……分かっていたけどロクなクエストがない」
「もうお昼回ってますもんね。美味しい条件のものは早朝に取られるでしょう」
掲示板に残っているのは、簡単すぎてつまらないものだったり逆に難しすぎて手に負えないものだったり、後は依頼内容と報酬が不釣り合いなものばっかり。
イリヤの言うとおり、美味しいものは早朝になくなるってどこでも同じだよね。
「うーん、どうしよう」
「――リリ、迷ってるの?」
「――リリさんなら高難易度のクエストでも問題ないでしょうに」
「さすがに二人でそれは……ん?」
なんか、イリヤとは違う声が聞こえた。
振り向くと、そこにはお姉様とエルサ、キルアが立っている。あと、なぜかお姉様の足元にすり寄るリリスもいた。
「え! お姉様にエルサにキルアちゃん!? どうしてここに!?」
「私も冒険部に入部届を出したんです。体を動かすって楽しそうだし」
「私はエルサ様の付き添いで……」
「生徒会の仕事ならとっくに終わらせたよ。イレーネを捕まえたらすぐに終わるんだよ」
イレーネ様……お気の毒……。
うん? でも、そういえばイレーネ様は生徒会長なわけで、仕事をするのは当たり前だったような……。
なんだか混乱してきた。
私が唸っている間にエルサが掲示板から一枚の紙を剥がす。
「これとか簡単でしょう。どうです?」
「どれどれ? ビルジャイアントの討伐かぁ。出来なくはないかな」
ビルジャイアント。それは、緑色の巨人。
三つも目があるから地味に気持ち悪いのよね。しかも、結構硬いしデカいしデカぶつの割に素早いし知性もちょっとあるから非常にめんどくさい。
しかもこいつ、性欲お化けなのよね。オークとかゴブリン以上に女性の敵。あいつらも酷いけど、こいつも中々に酷い。
ビルジャイアントに捕まると、一週間で子どもが生まれるんだけどその間ずっと犯され続けて最後は生まれてきた子どもに食べられちゃうんだって。
だから、基本的に女性冒険者はこいつの討伐をやりたがらない。かといって男性冒険者がやるのかと言うと、結構強い部類の魔物で倒したとしても自分の武器が破損してしまう確率が高いからこれまたやりたがらない。
ギルドは報酬を高くしてるんだけど……それでも余るんだね。これ、四回も報酬がつり上がってるよ。
それにしても、エルサも中々にすごいクエストを選んだね。
「どうしてこれに?」
「今日中に終わりそうな内容で一番強い魔物がこれしかなくて」
言われて見てみると、確かに他のクエストは目的地まで少し時間がかかるものばかりだ。明日も学校がある私たちにこれらを受けることは出来ない。
その点、ビルジャイアントの出現場所は捜索時間を考えても今日中に終わる。これでいくとしましょうか。
「じゃあ、これにしよう! 受付に持っていくよ!」
エルサから紙を受け取って受付のお姉さんに持っていく。美人だ。
「ようこそ! おや? 初めて見る顔ですね」
「先日帝都に来たんです。で、学校の冒険部の活動で来ました」
「学生さんですね! 冒険者証の発行……ではなさそうです。クエスト受諾ですか?」
「そうです! これを!」
お姉さんに紙を出す。
まぁ、当然と言うべきかお姉さんは紙を受け取って確認するなり顔を青くした。
「ビルジャイアント!? ダメですダメです! これは銀等級以上の冒険者パーティーで立ち向うほどの相手ですよ! 学生さんにこのクエストを受けさせることはできません!」
「大丈夫ですって! 私たち強いですから! 冒険者証もそれなりの等級ですし」
「……確認してもよろしいでしょうか?」
言われたとおり、お姉さんに私の冒険者証を渡す。
冒険者証を受けとったお姉さんは、今度は別の意味で顔を青くし始めちゃった。
「リリ=ペルスティア様!? あの、ペルスティアのギルドで金等級になった【破壊令嬢】の!?」
おい誰だその不名誉な呼び名を流行らせた奴は。
これは、ペルスティア領に戻ったらギルドで一暴れしなくちゃダメかな?
「これは失礼しました。ビルジャイアントの討伐、よろしくお願いします!」
「任せなさいな!」
自信満々に言い放つ。だって負ける可能性なんて絶対にないものね。
不名誉な呼び名で恐れられている……らしい私。
私と同じくらいには強いはずのイリヤ。
バランスが良くて結構……いやかなり強いお姉様。
最強格の魔物であるリリス。
存在がもうデタラメなエルサ。
いろいろとサポートしてくれそうなキルアちゃん。
明らかに過剰戦力なのよね。ビルジャイアントが逆に可哀想に思えてくる。私たち、戦争にでも行くんだったかな?
と、こんな感じでとんでもない私たちはビルジャイアント討伐のため、目撃情報があった帝都からちょっと離れた森へと向かうのでした~。
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