第25話 <百合百合サンドイッチ!>

 お風呂から出て、夕食にカレーを堪能した私たちは自分たちの部屋に戻る。

 私とイリヤ、そしてお姉様とリリスが使うちょっと大きい部屋なの。お姉様も一緒なのが少し意外だった。

 なんでも、私たちがこっちに来る準備をしているときに、お姉様がお母さんに頼んで一緒の部屋になったらしい。急遽ベッドも大きいものにしたんだって。

 ……そう、部屋にあるベッドは一つだけなの。これもお姉様がお願いしてこうしたんだって。

 天蓋付きの巨大ベッド。帝都にある家具屋さんで特別に作ってもらった最高の一品なんだってさ。小さな村の一家族が数年間遊んで暮らせる金額だったとか。

 そこまでのお金を出さなくても……って、思ったんだけどね。お姉様が珍しくわがままを言ったから、お母さんも賛同したらしい。普段から聞き分けのいい人のわがままは効果があるみたいね。

 ちなみに、私が同じ事を言ったらすっごい笑顔で怒られると思う。理不尽だ。

 さて、近く待っている入学試験の勉強をイリヤとお姉様に見てもらって終わらせると、もう外は真っ暗。日付が変わる時刻がもうすぐそこまで迫っていた。

 灯りを消して三人でフカフカのシーツに飛び込む。ちなみに、リリスはもうずっと前に作ってもらったベッドで丸くなっていた。

 シーツからほんのりと香る甘いこれは、お姉様の優しい香りだ。すっごく幸せな気持ちでいっぱいになる。お姉様が間近に感じる。

 枕に顔を埋めると、すぐ隣でお姉様が横になる。両腕を伸ばすと私の後ろで交差させ、胸元に抱き寄せてくれた。

 フカフカのパジャマが気持ちよく、温かな体温を感じることができる。気持ちがすっごく落ち着いてくるのがよく分かった。


「幸せぇ……」

「ふふっ、よーしよし」


 頭を優しく撫でられ、子どもをあやすように背中をさすってくれる。

 お姉様の母性がすごい。今夜は熟睡できそうね。心地良い夢も見ることができそうな予感。

 イリヤも私に密着してくる。私を真ん中にお姉様とイリヤによるサンドイッチの完成だ。


「あらあら。これはまた可愛いメイドさんね」

「リリは私が隣にいないとよく眠れないようなので。ここ、失礼しますねエスナ様」

「いいよ。……ねぇ、私のこともエスナって呼んでくれていいんだよ?」

「申し訳ありませんが、エスナ様は年上なので、それはちょっと……」

「だよね。無理言ってごめん」


 私の背中から手を離したお姉様は、イリヤの背中に腕を回す。そして、そっとイリヤのことを抱き寄せた。

 寄せられたイリヤの体が私と密着する。前にお姉様、後ろにイリヤと最高のご褒美領域に私はすっぽりと収まってしまったわ。

 令嬢とメイド、三人による甘過ぎサンドイッチ。ふわふわ感触と天にも昇る香りで、私の意識は微睡みの中へと沈んでいく。


「リリは眠いみたいね。じゃあ、ゆっくりおやすみなさい……」

「うみゅ……お姉様ぁ……」

「~ッ! イリヤちゃんずるい! こんな可愛いリリをずっと独り占めしてたんだ!」

「そうですね。でも、リリがここまで甘えた声を出すのは、エスナ様の胸の中だからでは?」

「そうなの? じゃあ、もっと私に甘えてくれていいんだよ~?」


 イリヤが毛布を掛けてくれる。三人が密着して眠るなんて、最高! 帝都生活一日目から素晴らしいご褒美です。

 これ、きっとリラックス効果も期待できるわよね。学校でもし嫌なことがあっても、毎日こうして三人で眠れたらすぐに悩みも吹き飛ぶ!

 イリヤの寝息が聞こえてくる。お姉様も静かに目を閉じていたから、私もゆっくり夢の世界へと旅立っていった。


 あ、ちなみに、ものすごく寝付きがよかったです。現実だけでなく、夢の中でもお姉様は私のことをすっごく愛してくれたし、イリヤの嫉妬姿が可愛かったな。

 起きているイリヤにこれを話しちゃうと、拗ねちゃうだろうけどね。

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