第24話 <お姉様覚醒!>

 あの後、全力で帝都観光を楽しんだ私とイリヤは屋敷に帰ってきた。

 うーん……ちょっと食べ過ぎたかも。珍しい食べ物がいっぱいあったからつい我慢できずに……。

 門を抜けて屋敷に入る。すると、何やら美味しそうな匂いが厨房から漂ってきた。この匂いは……知ってる懐かしい! この世界にもあったんだ!


「何でしょう? 私もかなり食べたはずですが、食欲が……」

「これはカレーだね! 手軽で美味しい家庭料理の王様!」

「カレー? よく分かりませんが、リリが美味しいって言うなら」


 こっちの世界のカレーはどんな感じなんだろう? 日本だと家庭用のルーを使ったものとか、ここが一番カレーっていう店しか行ったことないし。ちょっと楽しみ!

 厨房を覗くと、大きめの鍋にいっぱいのカレーが作られていた。ちゃんとスパイスから作ってるのね。

 忙しそうに行き来する複数のメイドさんとコックさん。そして、お肉を切るリコレットさんとその足元で丸くなっているリリスが見えた。リリスの周囲には小魚とか魚の骨とかが纏められている。さては、餌付けされたわね?

 気配に気づいたのか、リコレットさんは顔を向けることなく話しかけてくる。


「お帰りなさいませお嬢様。ですが、まだお夕食は……」

「あっ、いいよ。先にお風呂入ってくる」

「はい。行ってらっしゃいませ」


 というわけで、イリヤと一緒に浴室に向かう。ちなみに、リリスにも声を掛けたけどリコレットさんの足にしがみついて拒否された。後で覚えてなさいよ……!

 部屋から着替えを持ってきて浴室へ向かう。浴室は屋敷のなかじゃなくてちょっと離れた庭にあるから湯冷めしそう。どうしてこんな所に作ったんだか。

 浴室のある建物の扉を開ける。温泉みたいに女風呂男風呂で分かれてるから、ちゃんと自分の行くべきほうで脱衣所の扉を開けた。

 先客がいた。汗で体を濡らし、健康的な輝きを見せるお姉様が下着を脱いでいる。あ、目が合った。

 お姉様は無言で自分の体を眺めている。そして、黙ってお風呂に入ったかと思うと、水をかける音がして勢いよく戻ってきた。びしょ濡れの体で抱きつかれる。


「リリー!」

「うわぁ! お姉様私まだ服着てる!」

「どうせ洗濯するから一緒一緒。さぁさぁ一緒に入ろうねぇ~」


 めちゃくちゃ慣れた手つきであっという間に服を全て脱がされ、風呂場に連れ込まれた。というか、お姉様はどうしてこんなに服脱がすの慣れてるの? 誰かに実践してる?

 椅子に座らされ、お姉様が後ろに座る。桶にお湯をすくって優しく頭を流してくれた。石鹸を泡立てて頭を洗ってくれる。


「リリと一緒にお風呂。いいわねぇ~」

「私も。お姉様と一緒は嬉しいな」

「あーもう! この可愛い妹めぇ!!」


 わしゃわしゃとされて強く抱きしめられる。幸せな二つの弾力が背中にダイレクトに伝わって……幸せですはい。

 頭を洗い終えると、今度は体を洗ってくれる。はぁぁぁぁ、ここが天国……。


「リリって不思議よね。結構食べてるイメージがあるのに太りもしないし胸に栄養がいってるようにも見えないし……」

「ちゃんと運動してるから~……って、私が貧乳だと!?」

「言ってない言ってない。大きすぎないよねってこと」


 全身を洗い終わり、お湯をかけてもらう。温かいお湯を頭から浴びて最高に気持ちいい……。


「そういえばお姉様。かなり汗をかいていたけどどうして?」

「えっとね。学校で部活動ってのがあってね。そこで私は貴族剣術部に入ってるの。剣を振るから汗もかくのよ」

「そういうのあるんだ!」


 つまり、部活動みたいなものね。本格的じゃないの!

 今からすごく楽しみになってくる。私もその貴族剣術クラブに入ろうかな? なーんてね。いろいろ見てから考えよう。

 すっと遅れてイリヤも入ってくる。健康的な色白の体はいつ見ても綺麗だ。

 その姿に見惚れていると、体の向きを変えられてお姉様と向かい合う。後頭部を押されて抱かれた。

 全身に感じるお姉様の温もり。フワリと心地よく、ほんのり甘い香りがいっぱいに広がった。

 頭を撫でられて安心するこの感覚。お姉様からの愛を感じる。


「ふっふっふ。覚悟しなさいなリリ」

「え、どういうこと?」

「ずっと我慢してたけど、もうそれは終わり。これでもか! ってくらい甘やかしてあげるからね~」


 あはは、お姉様ったら冗談が上手くなって~。

 いや、多分これガチだ。冗談って感じの目をしてないもん。嬉しいけど、私蕩けそう……。

 お姉様に体を預けていると、イリヤが静かに手を握ってきた。控えめに後ろから抱きついてくる。

 これ、端から見ると百合に挟まれた罪深い人に見えるわ。でも、私は罪人ではないから。

 百合に挟まる女の子は許される! そして、これは私を取り合って百合に引き込もうとしているだけだからね。

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