第11話 療養編
飛び出したブラッドレーンは上手く闇に紛れた。
無理は承知で最短距離を飛ぶ。
雲で視界は悪く、途中飛び出す竜の影を振り切ってブラッドレーンは飛び続ける。
前方の岩壁を急上昇し、飛び出した岩肌を雷で蹴散らした。
ぽつり、ぽつり、ついに降りだした雨は慌てるリョウを嘲笑うように水滴はを増やしていく。
「っ…」
なびく白髪はシレイトまで耐えてくれるだろうか。
焦りは一瞬の判断を狂わせる。
直線を画くように飛びブラッドレーンの正面に大地を切り裂かんとする呻きをあげて巨大な闘竜が立ちはだかった。
雷が間に合わない。
闘竜の牙の方が速かった。
翼をやられる。
上昇も間に合いそうにない。
衝突の寸前、目の前に輝いた蒼白い結晶が闇夜に舞い散る。
「ヒロ!?」
氷河の如く大地を覆う氷の塊は闘竜の動きを封じてブラッドレーンを救った。
だが、リョウへの返事はない。
ただでさえ体力を消耗しているというのに竜の力を使ってしまえばその負担は取り返しのつかない事になりかねない。
「くそっ…ブラッドレーン、何がなんでも間に合わせるぞ」
「「もちろんだ」」
雨雲の中を黒い光が駆け抜ける。
昼間の疲れもあって、コウは直ぐに眠りについた。
ディオラードとソフィーはじゃれあったままの形で寝息を立てている。
だが、サンファニーの姿がない。
脱け殻の布団、そして、捕われていた2人の軍人の姿もなかった。
「ヒロさんは本当に優しいですね。でも、甘いです」
グランドマウンテンの竜によりここ2日の記憶を消され眠る2人をヒロからは中央に帰すよう言われている。
「殺してやりたいところですが、ヒロさんに嫌われるのは嫌ですし、ここは運に任せましょう」
ステファンが降り立ったのはグランドマウンテンの山脈の一部、まだ竜の住む区域だ。
リリスとオルドーをそれぞれ別の場所に降ろしサンファニーはステファンと共に去っていく。
広いグランドマウンテンで2人が出会うのは不可能だろう。
それ以前に竜の目を掻い潜って梺まで降りる事すら難しい。
それが、武器を奪われたただの人間ならなおさらだ。
「どっちが先でしょうね。竜が気づくのか、梺までたどり着くのか」
憎悪の交ざる金色が見上げた空から大粒の雨が降り始める。
暗く重たい色から滴る透明の雫がステファンの青銅に当たっては弾けていく。
それをサンファニーはじっと見つめていた。
「どうして、死んでしまったんですか」
呼ぶ名前は雨音にかき消され、ステファンのみがサンファニーの叫びを受け止めた。
夜が街を隠し、道しるべのように街灯が燃える。
住宅街は家族ですごす者たちが暖かな明かりを窓からこぼし、柔らかな色が広がっていた。
フジはそんな家々を眺めながら、最奥にある自宅へと静かに帰る。
ノブに掛けた手はひねる事を躊躇うが迎えてくれた妻サナエは彼を抱き締めてくれた。
しわの増えた妻はそれでも昔と変わらない愛らしい笑みを作る。
幸せな温かい家庭を作ろうと誓いあった日を忘れた事がない。
「おかえりなさい」
「ただいま」
毎日欠かさず交わす言葉に今日はハリがなかった。
コートを掛けて、テーブルな向かうと夕飯が用意されている。
フジとサナエ、そさて昨日から泊まっている『娘』の分だ。
「サラは食べたのか?」
サナエはゆっくり首を横にふった。
食器はきれいなまま、いつでも食べられるように仕度ができている。
しかし、本人はリビングにいない。
軍人と鉢合わせになった件からずっと、サラは部屋に閉じ籠っている。
ミサに事情は伝えてきたが、何も解決していない事実は気を重くさせた。
「俺がもう少し早く家を出ていたら、変わっていたかもな」
「仕方がない事よ。誰にも分からなかった」
頭を抱え込み、歯を噛み締めるフジにサナエは慰める事しかできない。
それは意味のない事だとわかっていてもだ。
ランプの灯が揺れる。
「どっかで見たことある顔だったんだ。今まで思い出せなかった。だが、思い出した。やっとわかった」
懐かしむように、悔やむように、憎むように、フジが言葉を繋ぐ。
「『あいつ』が一度だけ、俺を中央に連れてった時に紹介された、養成所の生徒だ。間違いない。『あいつ』を慕って付いて来てた奴だ。まだ、軍にいたんだな。奴らにとって、『あいつ』はその程度なんだ」
カタカタと小刻みにフジの影が揺れる。
サナエは黙ってそれを見ていた。
フジは15年前までシレイトと中央を結ぶ線路を守る仕事をしていた。
相手は賊であったり竜であったりしたが、発展の為にと精を出していた。
中央は敵ではないとシレイトに広めていた時期もあった。
しかし、今は違う。
15年前の事件が全てを変え、『彼』と関わりのあった人のほとんどが生活を変えた。
変えざるを得なかったのだ。
みえない傷は膿んだように後から後から痛みを生み、目を背けなくては気が触れるようだった。
フジもその一人だ。
職を辞め、近くの店を手伝うようになり、生活はガラリと変わった。
だが、目を背ける事はできなかった。
『彼』は誇りであり、親友だったからだ。
「昔の馴染みは皆逝っちまった。残ったのは俺とお前とカイだけだな」
懐かしき青春は全てシレイトでの記憶だ。
フジはこの地で産まれこの地で終わる運命を選んできた。
共に戦い誓いあった幼馴染みは一人、また一人と地へ還り、残るのは奏森夫妻と医師の東路カイのみだ。
「『あいつ』との約束を守るためには生きなきゃならねぇ」
「あなたは、知っているのよね。誰がdragon killerか」
サナエは竜騎士ではない。
しかし、dragon killerがどのような存在なのかはシレイトの住民であれば皆承知していた。
「レンちゃんも知ってたみたいだけど、誰にも言わずに亡くなったし」
「当たり前だ。どこで漏れるかわかんねぇから、親しくたって言わねえ約束なんだ」
冷たい水を喉に流し込む。
ようやくフジが夕飯に手をつけた事でサナエの表情がほころんだ。
「サラ、明日の朝、全てを話す」
フジの声が聞こえたのはずいぶん夜が更けてからだった。
ベッドの上で毛布も被らずに膝を抱えていたサラには何となくフジが伝えたい事がわかった。
返事ができない。
お礼も言いたいのに言葉が口から出ていかない。
『俺の娘』
それが嬉しかったのは事実だ。
けれど、身を投げ出すように軍人と向かい合ったフジに背筋が凍る思いをしたのも事実だ。
話が拗れ、相手を怒らせていたらどうなっていたことか。
もしかしたら殺されていたかもしれないのだ。
「フジの阿呆」
親しい人が傷つくのは自分が傷つくより恐ろしい事がある。
今回は自分の不注意が起こした結果であってフジにはなんの非もない。
「お父さん、かぁ」
そう言えば、フジの事を『お父さん』と呼んだことがなかった。
サナエの事も『お母さん』ではなく名前で呼んでいる。
理由はわかっている。
本当の両親ではないからだ。
それでも、15年も親代わりを務めてくれる2人を父母と呼んでもいいような気がするのだが。
「今さら…」
再び顔を埋めたサラにダンテが寄りそう。
触れた場所から体温が伝わって顔を合わせればぺろりと舐めてくる。
「平気だよ。ダンテ」
首回りをわしゃわしゃと掻いてやると気持ちがいいのか催促するように体を擦ってくる。
それに応えるように続けてやればいつしかダンテは腹を上にして転がっていた。
安心しきったその表情にサラは思わず笑ってしまう。
「元は野良のくせに」
いたずらっ子のような顔で擽る。
それが嬉しいのかダンテはいっそう幸せそうな顔をする。
落ち込んでいても仕方がない。
反省はしたんだと吹っ切ったようにサラはダンテと戯れた。
ギュッと抱き締めると丁度いい抱き心地だった。
「ありがとう。ダンテ」
ダンテになら簡単に言える言葉がどうして親しい人には言えないのか。
不思議に思ったが、もう考えるのはやめた。
明日の朝、ちゃんと目を合わせて話をすればいいのだ。
それだけで、優しいフジはちゃんと解ってくれるはずだから。
その昔
大地を支配したのは竜の一族だった。
世界中に生息していた竜だったが、徐々に生息域を狭め、ついにはこのバルラチア大陸のみとなり、最後の楽園さえも今や人間の支配下にある。
パタンと閉じた本を窓際に置き真っ暗になった外を眺める。
雨は酷くなり風は列車を吹き飛ばす勢いだ。
車内アナウンスによればトンネルを抜けた先はそれほど酷い天候ではないらしい。
久しぶりに持ち出したカメラは動くだろうか。
首から提げられた一眼レフは容姿には不釣り合いにみえる。
漆黒のセミロング、しなやかな体つき、口許の黒子が大人びた雰囲気を醸し出している。
彼女は今まさにシレイトへと足を踏み入れようとしている。
気まぐれにつけたラジオは意外にも鮮明に音を捉えた。
天気予報は相変わらず雨の予報を伝え本日のニュースに切り替わる。
「「本日……、グラ……ウンテンへ調査……った軍…二名との連絡が途……現在も捜索が……ています」」
窓越しに黒くそびえるグランドマウンテンがみえる。
稲光が生き物のように空から山脈へ落ち不気味な空を写し出していた。
黙ったままの彼女はイヤホンを耳につけ、つけっぱなしのラジオに紛れる音を拾う。
「「……ア、あす…れは……くえ……しゃの……くに…かす……え…しれ……に…り…きら……そうさ…せよ くり…す」」
同じ文章が何度も読み返される。
ラジオのように強い電波なら鮮明に聞き取れるのだろうが盗聴されないように微弱で特殊な電波を使う無線は拾い上げる事すら難しい。
ましてや動く列車の中だ。
耳に届くだけでもありがたい。
繰り返される信号で何とか主旨は理解できた。
「「明日、我々は行方不明者の捜索に参加する
お前はシレイトに入りdragon killerを捜索せよ」」
外は変わらず激しい雨だ。
この調子ではシレイトに入れるのは早くとも明日の午後になるだろう。
「行方不明の2人、見つかるといいなぁ」
ぽそりと呟く彼女はぼんやりと外を眺める。
この雷雨では体力が尽きるのも時間の問題だろう。
雨風が防げる場所を見つけたとしても、グランドマウンテンには竜が住んでいる。
一時も休まる事のない夜を過ごしているのかと思うと気の毒でならなかった。
目が覚めるとそこは見馴れた白い部屋だった。
心電図の音と消毒の臭い。
煩わしい呼吸器もいつも通り、視線を左に向けるとこれもいつも通りだ。
腕組みをしたまま舟を漕いでいるリョウが座っていた。
声を出そうにも口が動かない。
あぁ、酷い方の発作だったのか。
今頃になって自分の身に起きた事を理解した。
ブラッドレーンに乗ってサンファニーの牧場を出たまでは覚えているのだがそこからの記憶が曖昧だった。
稲光の中を駆け抜けていく映像が断片的に残っているだけで繋がらない。
シレイトに戻ってからは全く分からないのだ。
それもそのはず、途中でブラッドレーンを庇い野生の竜を封じてからずっと意識がなかった。
病院に駆け込んだリョウに驚いた医師だったがすぐさま処置を行い、何とか一命をとりとめたといったところだ。
痛みは無いが人工的な呼吸は苦しいし、腕に刺さる点滴も出来れば外してもらいたい。
入院する度に器具が増えるような気がしてならないのだがそれが命を繋いでいるのだと言われると文句は言えなかった。
「…起きたか?」
不意にリョウが目を覚ましたら不安気に覗くリョウに不格好な笑みを作って応えると、ようやく安堵の色を見せた。
「カイさん、呼んでくる」
カイはヒロの主治医である。
幼い頃から診てもらっているため直ぐに適切な処置をしてくれる。
イヤードレイクでも5本の指に入ると言われるほどの名医でもあった。
ヒロの病気の正体を明らかにしたのもこの東路カイだった。
「……」
「ヒロ?」
出ていこうとするリョウに向かいヒロの口がわずかに動く。
それはわずかな開閉に過ぎなかったが。
「今はゆっくり休め」
とヒロの白髪を撫でて部屋を出ていく。
右目の見えないヒロにはその背を目で追うこともできない。
じっと、真っ白な天井を見上げるしかなかった。
これ程酷い発作は久しぶりだった。
呼吸困難になる事はあったが、意識を失うほど続く事はめったにない。
竜の力を使いすぎたとはいえ急過ぎる。
おそらく、雨や疲れが悪いように重なって起きたのだろう。
弱い体を何度も恨んできたがそれが自分でよかった。
などと思うようになったのは死期が近いからだろうか。
今はパートナーである竜、スノーライトの力で生きているようなものだ。
もし、竜騎士でなかったら、幼い頃に宣告された寿命よりも先に死んでいた事だろう。
見馴れた天井は掃除が行き届いているのか真っ白だ。
静かになった部屋で耳を澄ませれば鳥の声も聴こえる。
もう、日が昇っていたんだと同時にまだ生きていたいなと小さく願っていた。
「血色もいいし、呼吸も安定してきたね」
寝たままのヒロから呼吸器を外す。
ゆっくりと自分で息を吸うと、やはり心地がいい。
「心肺も正常に動き出したから2、3日で回復できるよ」
カイの手が優しく髪を撫でる。
バンダナのない右目は眼帯をつけられているうえに髪で隠れていた。
見えないようにとカイがかならず治療の時につけてくれる。
ヒロはその右目が嫌いだった。
「左目もちゃんと見えているね。他に痛むところはあるかい?」
目を閉じて首を横に振ろうとしたが、思うように体は動かずただ、目を閉じただけになってしまった。
そこは長い付き合いだ。
無いなら安心だと言ってカイはカルテに記入する。
「カイさん、俺はグランドマウンテンに戻らないといけないので、この後はミサにお願いします」
「わかった。後継者を育てるのも大変だね」
家族ぐるみで付き合いのあった陸稲と東路は今でもヒロを通じてよく会うために事情は知っている。
「こっちは気にしないで付き合ってあげなさい。今が大事な時期なんだからね」
「すみません。ミサには伝えておきます」
カイもかつては竜騎士として戦うこともあったが、医師として人命を救う事を優先し今では契約はしているものの、争う事はなくなった。
まるで若き日を見ているようだとカイは溢したことがある。
「リョウ君は、レンにそっくりだ。姿だけじゃなくて、性格なんて瓜二つだね」
「ありがとうございます」
陸稲レン リョウとミサの父親でありカイとフジの友人でもある。
漁師をしていたレンは沖合いで事故に合い帰らぬ人となった。
リョウにとっては父親であり師匠だ。
レンやカイの年代は竜騎士の全盛期で男はもとより、女竜騎士も数が多い。
その仲間たちと漁を終えた父が酒を交わす姿を幼かったリョウはしっかりと覚えている。
「さて、お互い仕事に戻ろうか。ヒロ君、また夕方診察に来るからね」
頭を深く下げるリョウと動けないヒロに手を振って部屋を出るカイはいつもの優しいお医者さんになっていた。
娘がいて、彼女も医師となったのは聞いていたが、勉強をするために都会の学校に通っていたためにリョウ達が会うことは滅多にない。
カイは昔の話をする時にほんの少しだけ荒々しさを見せる。
医師には必要なくとも竜騎士には必要な感情が残っている証拠なのだろう。
「いつか、竜騎士を辞める日が来るんだろうか」
それは何のために、誰のために、家族を持ったなら、危険な竜騎士は辞めざるを得ないだろうか。
ブラッドレーンに乗って飛び回る日もなくなるのだろうか。
「それは、、、リョウが、、決める、、ことやろ」
「喋れたのか?」
「いま、な」
髪を掻きながらため息をこぼすリョウにヒロは笑って見せた。
空は一面青で塗りつぶされていた。
薄暗い部屋にランプが1つ、青い瞳が一心に見詰める炎は静かに燃えていた。
「そんな、なんで今まで黙ってたの?」
対面しているフジは真っ直ぐサラに向かい合ってはいるもののその目に強さはない。
「黙ってるように言われてたんだ。『あいつ』は、俺とレン、カイ、それからカリナにしか話していない。シレイトの連中には心配をかけたくなかったんだろうな。『あいつ』はそういうやつだった。人のことばっかり考えて、自分のことは二の次だ。だからこそ、誰もが信頼を寄せていたんだがな」
フジは思い出を懐かしむように一言一言を丁寧に話す。
普段の彼からは想像がつかないほどにゆっくり丁寧に、それほど大切な話なのだろう。
「私が、知っていいことなの?」
「お前には、知る権利がある」
フジが見詰める蒼は、澄みきった水が映す深い海の色、彼らが誇りとして守ってきた色だ。
あの気高き色は確かにサラの瞳に映し出されている。
「『ミクリ』は、お前の父親なんだ。だから、お前は知らなきゃならない」
漆黒の髪、海を映し出したような蒼眼、成長するに従って似てきた顔立ち。
シレイトでサラが特別な扱いを受けているのはその為だった。
シレイトの誇りであった父親dragon killerのミクリの遺伝子を彼女は遺伝子をしっかりと受け継いでいた。
「ミクリは、お前に悲しい思いなんかさせたくなかった。だが、あいつはdragon killerだ
あいつが竜騎士の誇りを、規則を破るわけにはいかない
だから…
15年前、お前を俺に預けていったんだ」
浮かぶのは後悔ばかりだ。
シワを濃くし、歯をくいしばる彼は今にも泣き出しそうだ。
「ミクリは、死ぬことを知っていたの?」
生きている間にフジに預けたということは、事件を予測していたということだ。
もしそうなら、何故、死を避けることができなかったのか。
「わからねぇ。あいつは俺に『サラを頼む』としか言わなかった」
子に恵まれなかった奏森家は戸惑いつつも喜んで受け入れた。
実の子ではなくとも親友の、シレイトの誇りの子を大事に大事に育てた。
「フジにもサナエにも感謝してる。実の両親がいなくて辛かったけど、優しくしてくれたし、無理しなくてよかったし…」
握りしめた手が震えた。
口が思うように動いてくれない。
辛いはずだった。なのに涙が出ない。
「私は、フジとサナエの子だよ。ミクリの…子供じゃない。そうでしょう?お父さん」
声は震えて上擦っていた。
肩が揺れ言葉を吐き出した口は直ぐにギュッと絞られる。
真っ直ぐ見詰める蒼がNOとは言わせてくれなかった。
「あぁ。お前は、俺達の子だ。dragon killerなんか、関係ない」
世界はずっと残酷だ。
こんな女の子に、竜騎士でもなんでもない女の子に、なんて重圧をかけるのだろう。
手に触れた漆黒は柔らかく、震える肌は冷たくなって大きな手が触れてようやく、蒼の目から大粒の涙が溢れだした。
娘を抱き締めたフジもまた、一筋の涙を溢していた。
「あなた、カイ君から電話よ」
サナエが叫んだのはサラとフジが涙を拭った直後だった。
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