人助け。②
帰ってくると、家にはショコラの姿がなかった。
シフォンはというと……猫と呑気にじゃれていた。
シフォンも特に心配している様子はないので大丈夫だろうと思い俺はそのまま、恵李の料理の手伝いを始めた。
「かわいい子帰ってこないねぇ~」
恵李は包丁で野菜を切りながらキョロキョロ見渡して言う。
「包丁使ってんだからキョロキョロしないで手元に気をつけろ」
俺は横でジャガイモの皮むきをしているだけだからあまり怒りたくはないが少し威張り気味になってしまった。
「う、うん! 気をつける!」
こんな事にも限らず恵李は特に文句も言わず素直に受け止める。
この後も野菜を炒めたり……怪我などもなく無事にカレーライスが出来上がった。
んで……あいつらはっと……。
「カ、カンタさん! 大変です! ショコラさんがいません!」
お前、聞いてなかったのか。
それに今気づいたのか……。
でも、そろそろ戻ってきてくんねぇとな……。
なんらかのショックで死なれても困る。
あいつがどんだけメンタルが強いと言っても、きっとその辺の人間と比べてみると、か弱いのかもしれない。
「ちょ、ちょっと俺探してくるっ」
今、俺は幼なじみを自分家に一人置いて別の女の子を探しまわっている。
超最低でクズ男だということを実感する。
さっきだってそうなのだ。
ショコラを一人残して俺は幼なじみと買い物をしていた。
こう思うと傷を負わせていたのは俺のせいだったのではないかと思えてくる。
とりあえずよく通る道や通学路を行ったり来たりしてみる。
いない。
途中の公園に行ってみたりもした。
いない。
「あいつめ、どこ行っちまったんだよ」
すると、不吉な風が吹きポツリポツリ……ポツポツ……というテンポを少しづつ早めてくような感じで雨が降り出した。
「こんにゃろーっ、風邪ひくぞっ」
そして、次第に強まる雨、風と共に雷までなり始めていた。
突然、どこからか雨に濡れた黒猫が出てきた。
「飼い主、いないのか……? お前も家に連れてってやる」
俺がそう言って黒猫を抱き抱えようと手を伸ばした瞬間、「にゃぁ~」と一声上げて建物と建物のわずかな隙間の方へ走っていった。
俺には当然猫と会話ができるなどという機能は搭載されていないが、なぜだかこいつの言っている事は少し理解出来たような気がして後をつけてみた。
「やっぱり」
いた。
建物と建物のわずかな隙間に小さくうずくまってなにかに怯える小動物のようにぶるぶる震えている。
「ショコラ、ごめんな。寂しい思いさせてごめん」
〝あたしのために探しに来てくれてありがとう〟
〝チュッ〟
冷たい。
今日のくちびるは今まででいちばん冷たい。
でも言葉に込められた温もりが神経を通ってひしひしと伝わる。
俺はもう誰か一人だけ仲間はずれにゃあさせんぞ。
特にお前はな。
「寒いだろ。早く俺の背中に乗れ! さっさと家に帰るぞ。このネッコさんも今日は家までご一緒しちゃうぜっ」
一丁前にショコラを背中に乗せておんぶして、手に黒猫を抱いて俺は家へダッシュで向かった。
幼なじみとキス魔の関係には特に変わりはないが、何かしら言ってすぐに仲直りはできた。
幼なじみが作ったカレーをみんなで食べて、心も体も完璧あったまったとさ。
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