新婚生活トライアルキャンペーン②
「旦那様起きなさい! 今日はあんたのワガママに付き合ってあげるんだからねっ!」
「へいへい、俺の嫁さんちょっと手を貸してくれ」
俺は嫁の柔らかい手を借りて寝床から出る。
おい、今少し嫌な顔したろ。
「んで、あんたは嫁の事よりもやっぱりあの天然擬きさんが気になるのねぇ~!」
そう、俺のワガママというのは恵李のデートの様子見だ。
悪くいってしまえばストーキングをするのだ。
「そんなことないぞ、今日は嫁さんとのデートも込で行こうな」
ショコラは顔をじわじわと赤らめる。
俺もかなりキス魔の対応が上手くなったなあと少し思い上がる。
「ふーん、期待してるわよっ!だ・ん・な・さ・まっ! 」
肩をこっちにくっ付けてくる。
ツンデレの癖にたまに肉食なのはキス魔特有なのだろうか?
いや、それだとシフォンが例外になりそうだ。
でも、なんかこれほんとに新婚っぽいのかも。
「旦那様っ! あの男なかなか初デートからぶちかますわね」
うわぁぁぁぁ、学校一のモテ男がいつものウザさ満点スマイルで俺の幼なじみに手を出してる。
正直見てらんねぇ。
「あの女もさっさとあーゆういい男でも見つけて付き合ってしまいえばいいわ……」
俺にはいい男だと思えないぜ。
「お前もあーゆう男がいい男だと思うのか?」
別にショコラのタイプの男なんてどうでもいいかもしれないが聞いてしまった。
「んな訳ないじゃないの! あたしはもっとこう……あ、あんっ、あんたみたいなやつの方がマシだと思うわよ!」
そっか、そっかお前は俺の嫁だったもんなぁと思い出す。
「ってマジで!?」
「声がでかいわよ! バレたらどうすんの!?」
え? こいつ本気だったりしねぇよな……?
やけに顔が火照ってるように見えるが。
これは勘違いしかねないぞ……。
「あっはは~、そうだよな~! あくまで、俺みたいなやつの方が〝マシ〟だと〝思う〟だもんなぁ~」
あやふやな言葉が2つも入っていると勝手に自己解決しようとする。
すると、
「黙れない旦那様には」
〝チュッ〟
「外だけど、今は誰にも見えないでしょっ! さあさあ、あの2人を追っかけ回すの再開しなきゃねぇーっ!」
俺は戸惑いでフリーズ状態のままだ。
「んあ、あれぇ~? 見落としちゃったなぁ」
人が沢山いるはずなのにショコラの声だけが俺の耳に届く。
〝よぉ~し! 天然擬きさんは諦めて2人でデートだけしましょ!〟
おくすりはよく効いた。
俺は黙って、たまにはこいつの言うことも聞こう。
こいつからの大切な気持ちも俺が大切に受け取ってやらなければ。
そして、デートが終わってから俺は気づく。
今頃気づくのだ。
こいつが嫁なのも悪くないかも。
新婚生活トライアルキャンペーンは俺にとって良い方向に行ったのかもしれない。
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