空気を作りたいキス魔と空気の読めないキス魔。
「ねぇ、もしさ、あたしが夢の中の世界に戻る事になったら寂しい?」
俺が学校から帰ってきて、黙々と学年末にあるテストに向けて勉強に取り組んでいた最中だ。
珍しく静かだったショコラが突然口を開いて尋ねてきた。
「どうしたんだ? いきなりそんな事」
「どっ、どうしたって言われても気になる事は気になるのよ!」
まあ、まともに答えが返ってくるとは思ってはいなかったが……、。
「うーん、シフォンは久しぶりに夢の中に戻れるの少し楽しみかもしれませんね~」
シフォン、それ俺はめっちゃ悲しいんだけど。
「シ、シフォンはもう少し空気を読むという事を覚えなさい!」
素直じゃないくせに言ってることでいちいちバレバレなんだよなぁ。
「ほうほう、シフォンは戻りたい。
ショコラは戻りたくないと……」
「なっ、なにあんた勝手に勘違いしてんのよっ! あたしそんな事は一言もっ……!」
この言葉何回聞いただろうか……。
こいつのテンプレ文章か何かか?
「で、でも……。ちょっとだけ……本当にちょっとだけよ! 寂しいと思うわ! あんたのために寂しいと思ってあげるわ!」
おう、俺のためか。
そいつは嬉しいぜ。
「す、すすす素直に喜びなさいっ」
お前はどうにも難しいなあ。
素直に喜んでたら「なに喜んでんのよ」って言われたり、逆に今みたいだと「素直に喜びなさいっ」だぜ?
俺的にはちょー困る。
「わ、わーい」
とりあえず戸惑いつつも喜んでみた。
「それのどこが素直よ。バカねっ!」
今回はきちんと喜んだ方がこいつのためになるらしい。
「いやぁ、寂しいのが俺だけじゃなくて安心したぜっ! ツンデレキス魔さん!」
こいつの前でやる素直な俺はいつも調子に乗った文章しか口から発することが出来ない。
「参ったな~、俺の口が不調で変なこと口に出してしまったぜ……」
〝チュッ〟
「口が不調だと聞いたから治してあげただけなんだからね」
また、やけに色っぽいな。
そんな風に思っていると、
「うむ~、なんだかまだこの世界にいてもいい気がしてきましたね~! なにより、ショコラさん! カンタさん! 仲良しですよね!」
いや、おいっ! 空気を読め!
「はぁぁぁぁ! シフォンはやっぱり空気を読む練習に取り組む必要があるわ。一緒にこの世界に残るわよ!」
そりゃ、怒るよな……。
「まあまあ、俺がこの世界に残してやれるように頑張ったるぜ!」
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