キス魔たちとのメリークリスマス。①

今日は12月25日クリスマスだ。

メリークリスマスという相手もまともに居ない俺はこの行事とは程遠くて無縁だろうと思っていた。

そう、この出来事があるまではずっとそうやって思って生き抜いてきた。



今日も今日とて寒さに怯えながら家に帰ってきた時だ。

ドアを開けた瞬間、中から異常に暖かい温風のようなものが吹いた気がする。


「お前ら、こんな時期になんだその格好は?」


リビングにいたキス魔の2人を見たらその熱気やらの正体がわからなくもない。

いや、お前らクリスマスに対しての気合いが半端ねぇな。

ショコラもシフォンもサンタコスというものだろうか? そんなところだ。

2人の格好は寒そうなのにどこか猛烈な熱情が感じられる。

こんなの前にもあった気がするのだが、それは気の所為だろうか……。


「はぁ? これもあんたのためなんだけど」


そうには聞こえねぇけどな。


「ショ、ショショショショコラさん! その言い方は良くないですよぉ!」


うんうん、そうだシフォン。

お前はこんなやつみたいになるなよ。



「あ、あんた今シフォンちゃんとあたしのこと比べてたでしょ!」


なんでそこまで俺の心を読めるのか、ここまで来ると恐怖を感じられるぜ。



「いや、多少は思うぜ俺だって? お前がシフォンみたいに可愛い言い方を出来たらどんなに最高だろうなとか」


「聞いた事とあんたの言ってること全然違うし、そんな妄想してたなんて最っ低!」


いや、妄想じゃない。

事実だぞ、ショコラさん。


「え~と、あの~、そろそろクリスマスパーティーしませんか……」


まあ、お前らのこのサンタコスを見た時には察してはいたが、クリスマスパーティーをするらしい。

でも、俺こんなショコラにキレられまくるクリスマスすっげぇ嫌だぜ?


「あ~、そうだったわね。えっと、クリスマスだっていうのに空気悪くするようなこと言ってごめん」


視線がキョロキョロと少し不自然だったが今日はすぐに謝ってくれた。


「そんな謝るほどじゃねぇぞ」


嘘だ。俺は全くの嘘をついた。

俺はショコラにキレられまくるクリスマスは嫌だと言ったが、家族以外の誰かとクリスマスを過ごすのは嫌だとはまだ言ってない。

今まで俺は家族以外と、このクリスマスという一日を過ごした事がない。

別に家族でもいいのだが、やはり恋人や友達といった家族以外の大切な誰かと過ごすといったようなクリスマスは世間的にもかなりの確率で行われている。

前にも言ったが今の俺にはキス魔は大事で重要な存在となっている。

だから、俺は……


「クリスマスパーティーはじめんぞー!」


今年のクリスマスは思いっきり楽しんでやりたいと思えた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る