冷え性にはキス魔のキッスを♡

「あー、なんで学校もこんな寒いんだよ」


俺は窓際の席に座って1人寒さに耐えながら必死にラノベを読む。

なんでこんな時にもラノベを読んでいるのかと言うと、友達がいn……。

いや、言いたくもねぇ!


「カンちゃん寒そうにしてるけど体調とか大丈夫~?」


俺の幼馴染はほんわかしていて可愛くて優しくて相変わらず萌え要素の塊のようだ。

今日は授業中にかけているメガネを取り忘れたのかメガネをかけっぱだから尚更だ。

俺にメガネっ子属性なんてものはあっただろうかとふと考える。

まあ、それは後にしといて……。


「寒いだけだから大丈夫だぜっ」


「大丈夫なら良かったけど、私心配症だしカーディガンだけ貸してあげるよ~」


そう言い恵李は俺の肩にカーディガンをかけてきた。

ふんわりといい香りがしたと言いかけて口を噤む。

そんなこと言ったら流石の俺でもキモいし一生それでいじられそうだ。

それに普通のパターンだと女の子の方が「寒い」というのを口にしてぶるぶるしていて、その姿を見て男がカーディガンやら上着やらを女の子に優しくかけてあげるのでは? と思う。

みっともない男だぜ。


「ありがとうな~、でも俺なんだか元気出てきたーっ! ほら、もう暖かい!」


「あ、強がってる」


「強がってますねぇ」


(お前ら今日も着いてきてたのか)


と俺は後ろを振り向きもせずに心の中でつぶやく。

もう、こいつらが学校に着いてきているのにも驚かなくなっていた。

感覚というものも感じられないくらいに鈍くなっているのにも気づいていた。


「カンカンはあたしにアツアツのを求めてるんでしょ~! 冷え性は魔法のおくすりで治さないとね~!」



〝んっ〟



俺の口の中に未知の感覚が広がる。

生暖かくてとろけるような感覚だ。

そして、目の前にいた幼馴染は「ひぇっ」と聞こえたことの無い声を出して手で目を塞ごうとする。

ここでメガネをつけっぱなしだったことに気づきポケットにしまってからもう一度目を塞ぎ直した。

すると、教室内にいたヤツらもこっちに視線を集めだしザワザワしだした。

俺、終わった……。


「よーっし! あったまったっしょ! んじゃ!」


そして俺の視界の中から黒髪ツインテールの美少女は出ていく。


「あの子すっげぇ美女だったよな」


「おい! あの女の子どこの子だ! 教えろ!」


とクラスの男共は猿のように騒ぐ。

ダメだ。こいつらに教える筋合いは到底ない。


「幼馴染泣かすとかありえないんだけど~」


「学校で濃厚なのは……」


とクラスの女子共は俺を汚物を扱う時のような目線と態度で静かに騒ぐ。

どうか見なかったことにしてくれ!

あと……


「ごめん! 恵李ごめんな! 変なの見せちまってごめん!」


大事な幼馴染と言い方はなんか誤解されそうだが、まあ、唯一のクラスの話し相手の恵李までを敵に回すようなことをしてしまえば俺は完全敗北なのでもちろん謝る。

しまいに土下座をした。


「あいつマジだっさ」


「土下座はないわー」


めちゃくちゃに言われたが問題はこの後だ。


「カンちゃん謝らなくていいんだよぉ~! 私ずっとカンちゃんの味方だから! クラスでたくさん言われても私が味方だから大丈夫だよぉ~!」


あ、このパターン。

恵李は泣きながらだったから声のボリュームがそこそこ大きかった。

そして、ザワザワしていたクラスも急に静かになってメソメソしてる恵李の方に一斉に目線が変わった。

おかげで今、俺は注目を浴びずにいられているのだが救われたのだか救われていないのだかさっぱり分からない。

でも今なら俺に散々言ってきたヤツらとも同じ反応をできるだろう。



〝え?〟



恵李以外の教室にいる生徒の顔はみんな目、口、鼻全てのパーツが簡単に点で書かれたかのような顔になっていた。

俺の幼馴染そろそろ天然じゃすまなくなってきたのでは……? 渋々と思う……。

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