学校祭のラッキー。②
「かんちゃーん!どこから行こーかねー」
マップを見て恵李は悩んでいる。
その頃いつもの定位置にいたキス魔たちは、
「くれぇぷ? っていうのを食べてみたいですっ」
「あんた、その子にクレープを食べたいって言いなさい!」
と俺に激しくクレープを進めてきた。
「クレープは今度俺らだけで行こうぜっ」
適当な事を言ったつもりだが、後々面倒くさくなりそうな約束を交わしてしまった。
「えっ!? カンちゃんっ!? それって……2人で行きたいってことっ!? そっちから誘ってくるなんて成長したねぇ~!」
〝え?〟
「いや~! 今度クレープ食べに行ことか言われたからびっくりしちゃったよ~! そんな顔しちゃって私に成長ぶり褒められたのに照れ
てんの~? ふふふーっ♪」
「あんた、この子なにか勘違いしてるわっ」
「そのようですねぇ……」
そう、こいつらが言っている通り恵李は勘違いしてる。
別に行きたくない訳では無いのだが……、お前には言ってないんだ……。
「お、おうっ! なんだかお前に言われると恥ずかしいぜ」
「じゃあ、いつ行く~?」
そっ、そこまで話が進んでしまったか~っ!
「カンタさんなぁにしちゃってるんですか! もちろん私たちともクレープ食べに行きますよねぇ!」
というかお前たちとしか行かない予定だったからなっ!
「お前の好きな時でいいぞーっ」
「うーん、じゃあ明日! とか~?」
〝あした!?〟
俺とショコラとシフォン、3人で声を合わせて驚く。
すると、何者かが俺の腕を組むようにして奪ってきた。
〝ごめん、明日あたしたち用事があるからっ〟
俺は今誰なのかわからない美少女に腕を引っ張られて走っている。
走っている時の後ろ姿が誰かに似ている。
誰なのだろうか。
「済まないが、どちら様……ですか……?」
「あたしだって! あ・た・し!」
どこか聞き覚えのある声。
いつぞやの事を思い出す。
「って、お前もしかして……」
「うん! そのもしかしてよ!」
「ショコラか!?」
「そうよっ……!」
「ショ、ショコラさん……! この姿はピンチの時しか……!」
左側を見るとまたもやとんでもない美少女だ。
きっと、シフォンだろう。
「で、でもお前らどうやって」
「一応、あたしたちキス魔はピンチの時用に人間に変身できる能力もあるのよ!」
「詳しくは教えられません……! 禁止事項ですので……!」
それ、どっかで聞いた事のある台詞だなっ!
「で……、お前……? あれどうするんだよ! 次に恵李と会う時気まづくねぇか?」
「その時は、テキトーに言い訳でもしとけば?」
いや、あそこまでしといて何も考えてないのかよ!
俺少し残念だぞ……?
「あの恵李……? だったけか……。あの子ならきっと明日になれば忘れてるから気にすることないって! んで、感謝は?」
「何を感謝しろと?」
「ま、まあ確かに……」
微妙に納得してくれた。
「でも……あたしさ……、あんまあの子とクレープ食べに行かないで欲しかった……。それだけだから! あたしの勝手だから! ごめん!」
さっきまで「感謝は?」とか言っていたやつとは思えない。
「ははははっ! お前っておもしれぇーやつだな! 恵李に嫉妬してたってことで解釈しちゃっていい感じ?」
「あんた、あたしに煽りとはなかなかやるじゃないのっ!」
「ごめんなっ、ついお前が照れて俺に謝ったりしてるところ見たら可愛く感じてしまって」
笑いながら言ったが今俺はとんでもないことを言った。
こいつに「可愛い」と言ってしまった。
お、思ってもいねぇこと言ってしまったぁぁぁぁぁ!
「ばーかばーかばーか! あたしもうキス魔に戻っちゃうんだからね!」
「あ、ちっちゃくなった」
「ちっちゃいなんて言うなーっ!」
拗ねて俺の腕をペコペコ叩いてる。
「それ、けっこー痛えぞ!」
「ふんっ! あんたのせいだしっ!」
〝チュッ〟
「あんたが痛いって言ったから……。治してやった……。感謝しなさい……」
可愛い。
「お前何をしたいんだ?」
「いいから感謝っ!」
可愛い。
「ありがとう……?」
「なんで疑問形なのよっ!」
文句が多いのもたまには可愛い。
「ありがとうなっ!」
「っ……」
ほんのり赤く染った頬はさらにパッと赤みがました。
何かしら言って、こいつはやっぱ可愛いんだな。
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